あきらめるな! 鳴る鍵盤へのアプローチ 2011/7/8掲載
Musser vibraphone New model M55GJ(日本限定シリーズ)
「鍵盤鳴らね~!」
ってボヤいてる、そこの君!
鍵盤を「鳴らす」メンテにチャレンジしてみないか?
■実は鍵盤は鳴るように出来ているのです
ビブラフォンやマリンバの鍵盤が鳴らないように聞こえる要因というものがいくつかあります。
ただでさえ鳴らない湿気の多い梅雨の時期だからこそ、鳴かぬなら鳴らしてみせようホトトギス。
ここではヴィブラフォンの場合について説明します。マリンバの人はビブラフォンのメンテのつもりで読んでください。
最も多い要因は【ダンパー】です。
ダンパーの圧力が必要以上に掛かってる場合は、圧力の関係でダンパーフェルトが凸凹になっていたりするのでわかると思います。
ダンパー下部にコイルスプリングの強さを調整するネジがありますから、それを調整する事によってダンパーを鍵盤に押し付けるプレッシャーを緩和出来ます。
次に多い要因が本日説明する【バー・サスペンション・コード】、つまり鍵盤の紐です。
鍵盤の紐(以下BSコード)はキレるまでそのまま使っている人が大半だと思いますが、なかなか標準品は一長一短、メーカーが楽器用に付属しているBSコードは耐久性では優れているものの、ノイズの発生等では半ば諦めている部分があります。
マリンバでもトレモロをすると特に気になるのが鍵盤と紐が接触する事によって起こるノイズ。
これがヴィブラフォンの場合だと、ペダルを踏む毎に、常に付き纏う厄介なものなのです。
メーカーでも苦労しているようで、取りあえずは以下のような妥協策を用意しているメーカーもあります。
・柔らかくてノイズは出ないけど切れやすいBSコード
・硬くて切れないけどノイズが出やすいBSコード
笑い話じゃありませんよ。
天は二物を与えず・・・・
その心境でしょう。
しかし、何か代用品はないものか?
そもそもこの素材は何が適しているのか?
あまり開拓されていないようなのですね。
ある時から鍵盤の鳴りと、BSコードの関係に着目していくつかの成果を得られました。
鍵盤が「鳴る」条件と連動させて開拓中なのです。
これまでのBSコードに関するルポは左のツール「ブログ内検索」に“BSコード”と入力し「このブログを検索」にチェックマークを入れてサーチしてください。関連記事が出て来ます。
そこで触れている事との重複をなるべく避けながら、梅雨の終りに試すBSコードの交換について。
■BSコードの交換
導入後一ヶ月が過ぎたMusserのニューモデル・ヴィブラフォンM55GJ。
基本的な鳴らし込みは終わり、この間ライブにレッスンにフル稼働。
平均すれば一日6時間は鳴っているでしょう。
その状態で「そろそろ限界かな?」と、次に手を付けたのがBSコード。
この一ヶ月間は純正のBSコードを装着したまま使用したのだけど、やはり音の抜けの向上もそろそろ限度。梅雨の時期だけにタダでさえ鍵盤の鳴りはパーフェクトではない。
この時期だからこそ、仕上げにBSコードを交換してみるわけ。
それでどれだけ鍵盤の性能を引き上げる事が出来るか・・・・
それでこの楽器の下地が決まる。
今回はこれまでの使用でベストな結果を出しているアクリル100%のカラーロープを使う。
右のブルーがそれで、直径は3mm。
アクリルは比較的耐久性があり、柔らかくノイズが出ない特性がある。
また、径が3mmというのがMusserの鍵盤のホールとの相性が良い。
メーカーによってホールの直径が異なるのだけど、個人的な経験上から言うと、目安としては純正のBSコードよりも一回り細いものを選ぶと鍵盤の鳴りが格段に良くなる傾向にある。
その分、耐久性は弱くなるがコストの低い市販品なら常にストックを鍵盤を運ぶキャリーバックのポケットにでもに忍ばせておけばよく(この時に2.5mに裁断し、一方をセロハンテープで“こより”状にしておくのがポイント)、交換の目安も楽器を分解する度に鍵盤の脱着時に様子を確認出来るから安心だ。
耐久性よりも、音色や鍵盤の性能を引き出す事のほうが重要だ。
張り替えではセロハンテープが大活躍。
このように先っちょを“こより”のように細めるのがコツ。
その長さは・・・・
ちょうど低音域の鍵盤を貫通する程度の長さ。
この“こより”が鍵盤ホールを貫く時のガイドとなってくれると作業が楽。
五分で基音側の張り替え完了。
続いて派生音側の張り替えに。
ここで一つ実験の為にコードの色を明るめに変えてみる。
ゴールドとの相性はブルーとどちらが良いかな?
オレンジを選択。
鍵盤の紐って地味~な色が多いんですが、ちょっとばかり色で遊んでもいいんじゃないでしょうか、メーカーさん。
機能的な鍵盤との相性はこのアクリル100%がベストマッチ。
っで、
視覚的な相性は果たしてどうかな?
意外と手こずるのが鍵盤の隙間に入れてあるラバーチューブ。
これにコードを通す事を想定してセロハンテープの“こより”の長さを合わせるといいでしょう。
張り替え完了。
さて、試奏してみると・・・・
これが驚くほど「鍵盤が鳴る」のです。
梅雨の時期とは思えないほどの音の抜けの良さ。
アクリル100%の紐は、柔らかいので純正のBSコードに比べると遥かに切れやすいのですが、僕の使用環境でも約半年は持ちます。
それでも交換するんじゃコストはどうなの?
と思うでしょうが、
市販品なら手芸屋さんやホームセンターで1m辺り70円~200円程度。
ですからそれぞれ2.5mあれば大丈夫なので5mで350円から1000円。
純正のBSコードは2000円~4000円近くしますから予備を3セット準備してもおつりが来ますね。
この状態で1日経過。
その間、レッスンに6時間使って、レッスン生全員が音の違いに気付くほど。
ちょっとした事だけど物凄い効果でしょ?
試す価値ありです。
(今使っているBSコードを丁寧に外せば、もしも新しいBSコードが気に入らない場合でも復活できます)
アクリル100%の紐のベストな状態は過去からもわかっているので、今度は他の素材での比較試験に入ります。
新たな代用品として“綿100%”の紐を導入。
派生音側のオレンジ(アクリル100%)と交換です。
ゴールド鍵盤にブルーは色合いが良く、見た目は落ち付いています。
新しい楽器なので鍵盤自体もこれから鳴り始める状態。
アクリルと綿の比較を行いながらこの「綿100%」の耐久性が良ければ新たな代用品として採用出来るかもしれません。
ただし、今のところノイズは出ていませんが、切れるまでの時間は・・・・・神のみぞ知る、です。
その状況はまた改めてルポします。
まずは僕がお薦めするアクリル100%の紐に交換してみてください。
特にMusserの鍵盤を使っていて、何となく“鳴らない”と思っている人、今すぐ手芸屋さんにGO!!
鍵盤ではなく“紐”に原因がある場合が多いのです。
アクリル100% 径3mm
綿100% 径3mm
アクリル100% 径5mm
これから径の異なるアクリルも試してみる予定です。
径が増すと耐久性も増すはずですから。
このようにいろんな事を試しつつ鍵盤の鳴らし込みを進めて行き、秋頃にはベスト・コンディションが出来上がるようにするわけです。
焦らず、しかし、知恵は使っての鳴らし込み。
鍵盤が鳴らないと思って諦めている、そこの君!
ちょっと気分転換に、BSコードを交換してごらん。
驚くほど鍵盤が鳴ってくれるゾGOOD!
何事もアイデアと実践。
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