ベストアルバム大賞2019 木曜:Jazz & Classic Library 2019/12/26掲載
『ROSSLYN/John Taylor』(ecm/2003年)
毎週木曜ブログで紹介したアルバムからその年のベストアルバムを発表する日がやって来ました。あくまでも個人的な趣向の元に、今年の“今”聞きたくなったアルバムからのベストなので、新譜とは限らず、さらにヒットアルバム賞ではない事を最初にお断りしておきます。
今年も聴きも聞いたりで、合計38枚のアルバムを紹介しました。
演奏者が音楽を言葉で表現出来たら面白いと思って始めた木曜日の日替わりメニュー。
他人の音楽をとやかく言うな、という意見もあるかもしれませんが、聴いて楽しむ時は演奏者もリスナーも同じ。意見や感想を述べるのは自然な事。「黙って聞きゃわかるだろ」なんてカッコ付けて言ってみたいもんです。
2019年のベスト・アルバム発表!
第一位
【ROSSLYN/John Taylor(ecm/2003年】
2019/8/29ブログ
『深く、暗く、沈黙と、研ぎ澄まされた音は、究極の美でもある』
1 The Bowl Song
2. How Deep Is the Ocean
3. Between Moons
4. Rosslyn
5. Ma Bel
6. Tramonto
7. Field Day
John Taylor piano
Marc Johnson double-bass
Joey Baron drums
Recorded April 2002 at Rainbow Studio, Oslo.
今年の僕の中ではちょっとしたジョン・テイラー・ブームで、彼の旧譜も含めてCDストックからいろいろ引っ張り出したくなりました。また、リアルタイムでは入手出来なかった幻のアルバム(主にMPS時代)も含めてネットで買い集めて改めでジョン・テイラーというピアニストを感じる時間を持ちました。どこか影のある、それでいて陰湿ではないピアノを弾く今思えば不思議なピアニストでしたが、2015年に盟友ケニー・ホイラーの後を追うように旅立ってしまいました。
その中でもこのアルバムはECMレーベル誕生50周年を記念して今年リイシューされたもので、録音は17年前になります。2000年がつい最近に感じていた我々も、そろそろもう二十年も経っている事に気付き始めています。そんな時に、この2000年が始まった頃にテイラー達が描いていた音楽が実にしっくりと当てはまる空気を今年は何度も感じました。
その後のアルバムと比べても、非常に完成度の高い、僕の中では2019年に聞いたベストアルバムであると同時に、ジョン・テイラーという人の残したアルバムの中でも恐ろしくバランスの取れた作品だと思うのですね。
年末年始の慌ただしさに疲れたら、是非、部屋をダウンライトにして外界を遮断した時間を設けてこのアルバムを聞いてみて下さい。アルバムの紹介時に書いた事そのままです。
・・・沈黙のECMの4秒が過ぎると、まるで不幸の知らせが届いたような一音から始まる。
どうしてこんな音から始まるんだろうと考える間もなく、みるみる内にこの世界に惹き込まれて行く。
凍てついた冬の早朝に、車のエンジンを温めている時に聴いたらさぞや気持良さそうなこの研ぎ澄まされた、沈黙の先から届くような音に、ジョン・テイラーという人の気配を感じる。そのまま祈るように、そして車のエンジンが温まるのと同じように、やがて凍てついた音の細胞の中に温かい血液が巡り始める、
そんな感じで短いパルスを繰り返しながら、徐々に、徐々に、このトリオは目覚め始める。一瞬の眩い光線を放ったかと思いきや、再び沈黙の先に誘うが如き世界に引き戻されて曲は終わる。
1曲め“The Bowl Song”からしてこの有様だ。ここに何を語ろうか。無言の中でこの恍惚とした、実は待ち構えていた世界が広がるのを心の底から喜んでいる自分がいる・・・・
自画自賛ですが、なかなか自分でもよく表した文章だと思うのですね。ただ、これを書いたのが猛暑の夏のおわりだったのもお忘れなく。
ちなみに・・・・
第二位!
【FUSION/Jeremy Steig(ultra-vybe/2019年)】
2019/7/4ブログ
『今夜は横浜で市川秀男さんのライブ! で、ナント最後の二枚のうちの一枚の未発表トラックが・・・』
1. "Home" - 4:39 Originally released on Energy
2. "Cakes" - 4:52 Originally released on Energy
3. "Swamp Carol" - 4:11 Originally released on Energy
4. "Energy" (Hammer, Steig, Don Alias, Gene Perla) - 4:50 Originally released on Energy
5. "Down Stretch" (Hammer) - 4:14 Originally released on Energy
6. "Give Me Some" - 6:47 Originally released on Energy
7. "Come with Me" - 8:02 Originally released on Energy
8. "Dance of the Mind" (Alias, Steig) - 2:22 Originally released on Energy
9. "Up Tempo Thing" - 5:23 Previously unreleased
10."Elephant Hump" - 5:54 Previously unreleased
11."Rock #6" (Hammer) - 3:03 Previously unreleased
12."Slow Blues in G" - 6:33 Previously unreleased
13."Rock #9" (Hammer) - 5:50 Previously unreleased
14."Rock #10" (Hammer) - 4:14 Previously unreleased
15."Something Else" - 7:02 Previously unreleased
Jeremy Steig – flute, alto flute, bass flute, piccolo
Jan Hammer - electric piano, Chinese gong
Gene Perla - electric bass, electric upright bass
Don Alias – drums, congas, clap drums, percussion
Eddie Gómez - electric upright bass (tracks 5 & 7)
Rec : Electric Lady Studios, New York City, NY. 1970.
フルートのジェレミー・スタイグは中学時代のアイドルの一人で、一時期はジャズ・フルーティストも夢見たのだけどやはり鍵盤楽器で育ったのもありヴィブラフォンに落ち着いた。そんなジェレミー・スタイグのアルバムで一番好きでカッコよかったアルバムだけが、CD化されていなかった。紹介時も書いたがこのころにレコードで買って、尚かつCD化されたらいいなぁ、と思う残り三枚の内の一枚が今年リイシューされたのを知ったのは、惜しくも8月で予定よりも早くスタイグ氏の遺作を売りつくし閉じたジェレミーズ・ギャラリー& カフェを運営されていたアサコ夫人からだった。僕らが持っている本アルバムの本来の名称は『Energy』(キャピタル)だったのだけど、CD化リイシューされる時に未発表テイクが加えられてタイトルも変わっていたので気付かずに通り過ぎるところだった。
1970年と言う時点で、この先進性はマイルス・デイビスをも凌ぐ。とにかくステイリッシュでパワフルでまぁ、今聞いてもカッコいいジェレミー・スタイグの最高傑作! 皆、コレを聞いてエナジーを取り戻せ!
第三位
【CATHEXIS/Denny Zeitlin(cbs/1964年)】
2019/11/14ブログ
『これが1964年のデビュー作だというのが信じられないほどコンテンポラリーなピアニスト、デニー・ザイトリン』
1. Repeat Written-By – Zeitlin- 3:17
2. I-Thou Written-By – Zeitlin - 5:55
3. Stonehenge Written-By – Zeitlin - 5:15
4. Soon Written-By – I. Gershwin - G. Gershwin* - 5:12
5. Nica's Tempo Written-By – Gryc* - 5:55
6. Cathexis Written-By – Zeitlin - 2:25
7. 'Round Midnight Written-By – Williams*, Washington*, Monk - 5:35
8. Little Children, Don't Go Near That House Written-By – Zeitlin - 4:02
9. Blue Phoenix Written-By – Zeitlin - 15:26
10. Nica's Dream Written-By – H.Silver*
11. Requiem for Lili Written-By – Zeitlin*
Piano – Denny Zeitlin
Bass – Cecil McBee
Drums – Freddie Waits
Rec @ New York, 1964.
偶然にもジェレミー・スタイグのデビュー・アルバムでピアノを弾いていたデニー・ザイトリンが第三位に。このアルバムはレコード時代には聞く事が出来なくてCD化されて初めて聞けた。
録音は古いが、もしも、これを今のスタジオで録音したら・・・と考えると、もう、物凄い先進性のある音楽に聞こえるだろう。特に“'Round Midnigh”は時代を超越したフレッシュな感覚に驚くだろう。
録音は新しい方がいい、という典型かもしれない。
今年は以下のアルバムを木曜日に紹介しました。
#01.2019/1/10 『Fellini 712/Kenny Clarke/Francy Boland Big Band』(mps/1969年)
#02.2019/1/17 『TO AND FROM THE HEART/Steve Kuhn』(sunnyside/2018年)
#03.2019/2/7 『SIX INTENTIONS/Toshihiro Akamatsu』(2002)
#04.2019/3/14 『The Music In My Head/Michael Franks』(Shanachie/2018)
#05.2019/3/21 『SO EASY TO REMEMBER/Stephane Grappelli』(muzak/1993年)
#06.2019/3/28 『Black Byrd/Donald Byrd』(blue note/1973年)
#07.2019/4/4 『CONVERSATIONS/Hakuei Kim & Xavier Desandre Navarre』(verve/2019年)
#082019/4/11 『EASE IT/Rocky Boyd』(jazz time/1961年)
#09.2019/4/18 『AKISAKILA/Cecil Taylor』(trio/1973年)
#10.2019/5/2 『PIANO FORMS/Bill Evans』(verve/1970年)
#11.2019/5/16 『FREE TO PLAY/Espen Berg Trio』(blue gleam/2019年)
#12.2019/5/30 『at Shelly's Manne-Hole/Bill Evans Trio』(riverside/1963年)
#13.2019/6/6 『COUNTRY ROADS & OTHER PLACE/Gary Burton』(rca/1969年)
#14.2019/6/13 『REVERENCE/Kendrick Scott』(criss cross/2009年)
#15.2019/6/20 『DOWN WITH IT!/Blue Mitchell』(blue note/1966年)
#16.2019/6/27 『CARNEGIE HALL/Dick Schory』(ovation/1970年)
#17.2019/7/4 『FUSION/Jeremy Steig』(ultra-vybe/2019年)
#18.2019/7/11 『SINGS & PLAYS/市原ひかり』(pony caniyon/2019年)
#19.2019/7/25 『A CITY CALLED HEAVEN/Donald Byrd』(landmark/1991年)
#20, #21, #22.2019/8/8 「The Best of Two Worlds」(cbs/1976年), 「ELIS & TOM」(universal/1970年代) & 「JOAO GILBERTO」(verve/1973年)
#23.2019/8/22 『DECIPHER/John Taylor』(mbs/1973年)
#24.2019/8/29 『ROSSLYN/John Taylor』(ecm/2003年)
#25.2019/9/5 『ON THE WAY TO TWO/K.Wheeler J.Taylor』(cam.jazz/2015年)
#26.2019/9/12 『ONDAS/Mike Nock』(ecm/1982年)
#27.2019/9/19 『RUBBERBAND/Miles Davis』(warner/2019年)
#28.2019/10/3 『TIME REMEMBERS ONE TIME ONCE/D. Zeitlin & C.Haden』(ecm/1983年)
#29.2019/10/10 『CLOSE ENCOUNTER/Franco Ambrosetti』(enja/1978年)
#30.2019/10/17 『DREAMS SO REAL/Gary Burton』(ecm/1976年)
#31, #32.2019/10/24 『LOVE ANIMAL/Bob Moses』 & 『RING/Gary Burton』(eco/1974年)
#33.2019/10/31 『ANGEL OF THE PRESENCE/John Taylor』(cam jazz/2005年)
#34.2019/11/7 『BY THE WAY.../Mike Gibbs Orchestra』(ah/1993年)
#35.2019/11/14 『CATHEXIS/Denny Zeitlin』(cbs/1964年)
#36.2019/11/28 『FACING YOU/Keith Jarrett』(ecm/1971年)
#37.2019/12/12 『WHIRLPOOL/John Tayler』(com jazz/2008年)
#38.2019/12/19 『GARY BURTON & KEITH JARRETT』(atlantic/1971年)
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