ブルースが苦手な人、集まれ!-その3 2018/11/16掲載
ジャズもすでに古典、近代、現代と呼び名が変わるように演奏スタイルに時代の変遷が見られる音楽になって久しい。
そんな音楽のどこから聴き始めているかわからない相手に、「じゃ、ブルースやってみようか?」はかなり無謀な発言に感じる時代。
コンテンポラリー・ジャズから聴き始めた人、スイングジャズから聴き始めた人、モダンジャズから聴き始めた人。さて、この三者に共通する「曲」があるとしたら、、、、、コチラが教えて欲しいくらい無い。
なので、ある意味で「真っ白」の状態で三者どころか全対象者に向けて「これをやってみよう」と呼び掛ける場合であれば、ブルースという別物の存在をゼロから始めるのは悪くない。ここが肝心で、皆がゼロにリセットして始めるのがいい。少しでも既存の知識があると、多分邪魔をする。
先週出した「ブルースの時はね、トニックも七度がこうやってフラットするんだ。ほら、ブルージーだろ? そこにね、三度もフラットして、ほら、ブルージーだろ?」・・・・などはその典型で、教える側の一種のエゴが入った先入観を植え付ける事になる場合もある。
ジャズのセオリーではコードトーンの隙間にある音をテンションとしてオクターブ上の倍音に置き換えて説明する。これも最初はなんでわざわざ・・・と思うこともあるのだが、この名称の区分けは演奏能力の向上と共に自動的に頭の中で置き換えが進むようになる。
先週、そのシステムに基付いてブルーノートのテンション化に付いて一つの提案を出した。
ブルーノートを #9th #11th #13th とする話し。
#13thはこれまであり得ない呼び名ではあるけれど、そもそも調の機能の中での導音が完全に消えているわけでは無いところから調の第七音が長七度で存在しなければならないかどうかを検証してみる必要がある。もしも第七音が長七度の音程である必要がなければ、さっさと#13thなどという不思議な呼び名は取り下げよう。でも、元々ある調号を考えると、この#13thという呼び名はなかなかどうして、まんざらでもない。
そもそも何でこんな事を言い出しているのかと言えば、ジャズという音楽が好きになる「理由」にあると思う。
大別すれば、ジャズのアドリブの何が好きか? という質問に二つの答えが返って来る。
ひとつは「ソロ」、という答え。もちろんインプロ(アドリブ)のこと。
でももう少し突き詰めると、それがメロディーラインに含まれるフレーズやリックと答える人と、曲も含めたサウンドに含まれるハーモニーとメロディーの対比と答える人にわかれる。
前者の人はシングルメロディーの楽器、つまりトランペットやサックス、フルート等の管楽器を好み、後者の人はピアノ等の鍵盤楽器やギターなどの和音の出る弦楽器を好む。
すると、ジャズの入口を入って間もない頃は感覚的にこの前者、後者には大きな違いがあるはず。
ところが、ジャズの教本に触れて最初に思ったのは、「この説明は管楽器奏者向けなのか? 鍵盤楽器奏者向けなのか?」だった。
戸惑いながらも教本を開き、読み進むとコードやコードスケールの成り立ちまでは抵抗が無いのだけど、その先のハーモニーに入る所でビックバンドのセクション的なハーモニーの話しになる。ところが、(もちろんsoli等はあるものの)メロディーの無いコード進行だけのヴォイシングを学んだところで、これが自分の即興演奏したい事のどの部分に繋がるのかがなかなか見出せず、徐々に疎遠となってしまう。
かと言って、最初からコードの勉強もせずにフレーズの作り方に終始するスタイルのレッスンになると、けっこうコードを無視して強引なメロディー造りに慣れてしまい、曲を書かせられると赤点ばかりになったり(笑)
教本はどんどんテンションの話しとなって、複雑なサウンドをよしとする方向へと進む中で、アンサンブルやセッションではブルースが登場して、これまたコード・スタディーで叩き込まれたアヴォイドノートやノンコードトーンまみれになって混乱。。。
この時に、指向が「メロディー」派なのか、「ハーモニー」派なのかで少し説明をわけたほうがよいと思うのですね。
ヴィブラフォンという楽器はメロディー派にもハーモニー派にもなれる特殊な楽器なので、まず自分の立ち位置を決める。
僕は元々この楽器を4本のマレットを使ってノンビブラートで響かせるのが好きで手を付けたので「ハーモニー」派だった。
なのでブルーノートという特殊な音階の音楽を自分でどのように納得させようかと悩んだ。
そこで出した結論は、「ブルーノートをコードとして覚える」だった。
初心者の段階でブルースのフレーズが自然に浮かんで来る日本人はそんなにいないと思う。
たまたまリズム&ブルースやロックで聞き覚えが無い限り、最初からスラスラと演奏できるケースは稀。
それだけ日本で生まれ育った環境の中でブルースという音楽との出会いは限られている。
ブルーノートというのを聞いて、僕などはどこか恥ずかしいような、くすぐったいような、モゾモゾするような感覚が湧いてしまう人間を、そこに座らせて納得させるのはなかなか難しいかもしれない。
そこで僕は「コードとして」ブルーノートを覚えようと考えた。
まずは、弾いて覚えるのではなく、書いて感じる方法を探った。
そこで出て来たのが、ブルーノートのテンションへの置き換え。
#9th #11th #13th。
ブルーノートを半音下がった音として理解しようとしても固定ド絶対音感人間には無茶な話し。
そこで移動ド相対音感的に、そもそもブルースを習得する時のキーをシャープふたつのDメイジャーに据えた。
理由は単純で、元々シャープしている音(キーのスケール上の音)と、ブルーノートとして半音上がった音(#9th,#11th,#13th)とを視覚的に見分ける訓練に入った。
そしてとにかくプルーノートというものを弾いて覚えるのをやめて、書いて感じてみようとした。
最初は次のように従来の書き方でブルーノートを書いてみた。
ナチュラルは元に戻すという意味だけどそれは絶対音感と固定ドの印象を残すのであまりブルーノートの仕組みを理解するには向かない。
どうしたって、この場合“C#”の音にナチュラルを付けるとフラットして(半音下がって)“C”の音になったという意識になる。それを音程として捉えるとb7thだ。
しかし調号との不一致はトニックの場所では疑問符を生む。
そこで、#13thという意識に変えると・・・
他のブルーノートのテンション表記と、視覚的にも一致する。
ほんの少しだけどブルーノートというものをどのような位置に納めれば自分で撮り込めるのかのヒントにはなった。
そこで、自分でブルースっぽいメロディーを作ってそれをこの方式に置き換えてみた。
まず、ブルースっぽいシングルメロディーを従来の書き方(いわゆる固定ド的な臨時記号の付け方)で作ってみた。
さあ、こう書くと二小節目のGとかG7って書きたくなるよね。同じく4小節目のDもD7って書きたくなるよね。
どうやらこれが最初の混乱の原因だったようだ。
改めてブルーノートをテンションとして書き換えると・・・・
ほらね。
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