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洗練されたインプロを考える

セカンダリードミナントの打破  2012/6/29掲載 

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大原則として、コード・インプロヴィゼーションを行う時は、まず曲を理解せよ、という事。

それには鉄則があって、よりストレスの無い演奏環境を得る為に、曲に登場するコードのコードスケールを解明する事から手を付けよう、というもの。

手順としては、譜面に記された情報をどのように解釈するかという点で、優先順位があった。

すなわち、

(1)コードのコードトーンは、如何なる場合に於いても絶対的権限があるので解明の要件に組み込もう
(2)メロディーには、一部の装飾音を除いて絶対的な権限があるのでコードトーンの隙間の情報を得よう
(3)上記二つの条件からコードスケールが割り出せない場合は、調性、及び曲の調号との整合性で判定するようにしよう

その譜面に間違いがなければ、大半のジャズやボサノヴァ、ポピュラーの曲のコードスケールは解明出来る。譜面に間違いがあった場合は、まず間違いの修正からやり直さなければならない。

これによって、暗中模索や勘に頼って演奏していた部分は、きちんと裏付けが取れる事となって自信を得たインプロヴィゼーションへと結び付く。

めでたし!!
しか~~し、、
世の中そんなに甘くないところが厳しくもあり、楽しくもある。


『では、よろしくお願いします~』
「Take One ! 」
ヘッドフォンからクリックと共にオケが流れ始める。
それに合わせて目の前の譜面を見ながらソロ(アドリブ)を取らなければならない。

「はい。」

すぐにプレイバックだ。

『こちらで聴きますか~?』

「いや、このままヘッドフォンで聴く」

『了解しました。それでは流しま~す』

鉛筆を持って気になるところがあれば譜面にチェックマーク、なければそのまま。

「いいんじゃないかなぁ」

『おつかれさまでした ! では次の曲。。。 』

ヴィブラフォンで仕事をやるという事は、自分の好きな音楽だけ演奏してりゃいいわけではない。
かと言って、昔のように、何でもかんでもジャンルを問わずヴィブラフォンが必要とあらば出掛けるわけでもない。
自分が得意とする部門で注目される存在になれば、自然とその周りの部門から要望が増えて来るわけだ。
今は最初から指名されてその人に似合った(その人を活かしたいと思う)仕事が来るわけだけど、ジャズメンであれば一番大きい需要がポップスなどのアーチストのアルバムでソロ(もちろんインプロ)を取ったり、コード譜で伴奏を入れたりするスタジオの仕事。

その時の譜面とは・・・

先の条件とは大きく違うケースがある。

例えばどんなタイプの譜面かと言えば・・・・

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昔はアレンジャーが細かいパート譜を作って持って来たものだけど、今はアーチスト本人もパソコンやMTRでオケを作って来る時代。つまり演奏側と同等の立場で音楽の作業に関わっている場合が多い。
そうなると「ひとつの譜面」で全てを描けないと仕事にならない。

音楽性の豊かなアーチストであればあるほどミュージシャンと同様の気持ちで音と接している。
だから我々はプロとして最上のアイデアを演奏で記録しなければならない。
しかも、スタジオは時間当たりのコストが軽く数十万単位で動く場所だから、どれだけ作業をスムースに、スピーディーに行えるかがプロの腕の見せ所でもある。(タラタラやっていたら余計なコストばかり膨らむ)

『次はこの部分でお願いしま~す』

「了解。何小節前から出るのかな?」

『2つ前(二小節の意)からでよろしいでしょうか?』

「う~~ん、心の準備が必要なので四小節前からにして~(笑)」

『了解しました(笑)。それでは4つ前から流します。それでは!』

目の前にある譜面はこんな感じだと思ってくれるといい。

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「オッケー! こっちでこのままプレイバック」

『了解です。しばらくお待ちを・・・・。では、流しま~す』

譜面にチェックを入れる。

「七小節目の二拍めに気になる音があるので、その前の小節のフレーズの切れ目のどこかから七小節目の四拍めの裏にある休符まで差し替えましょう」

『了解です。ちょっと確認しますので暫くお待ちを・・・・。では、六小節目の二拍めの頭からイケそうなのでよろしくお願いしま~す・では、回りま~す』

「オッケー!」

『はい、お疲れ様でした。 では、最後の曲を・・・』

「これは最初のと似た感じにまとめればいいのかな?」

『そうです ! ただし、バンプが込みなので、その部分はけっこう盛り上がってほしいですねぇ!』

「了解。じゃ、行こか! 今度は二小節前からでいいよ、もう心の準備が出来てるから、逆に待てない!(笑)」

『ハハハ、了解です(笑) では二つ前から流します。ドゾ! 』

目の前の譜面はこんな感じとイメージしてほしい。

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「はい。 じゃ、そっちで聴くわ」

『了解です』

この間、約一時間程度。
もちろん曲の長さ、作業の難度によって若干の差異はあったとしても、現場の流れはこんな感じだ。

もしも、これに1曲1時間も掛かって何度も録音修正したりすると、あっと言う間に三時間は過ぎてしまう。
時間いくらでギャラを貰っているとしたら、そんなに高く無いギャラで三時間かかる人よりも、一時間で三曲仕上げられるがギャラが二倍の人を使ったほうがトータルすると無駄なコストがかからない。
それよりも何よりも、作業中の充実度が違うのが現場の空気となって、結果作品に現れたりする。

ジャズメンがこの種の仕事で重宝がられるのも、どんなコード進行であっても必ず正解を導き出す能力があるからに他ない。


さて、ここで提示した譜面、これまでの譜例とはかなり状況が違う。

まず、メロディーがない。

メロディーが無いとコードトーン以外にコードスケールを解明する手立てが無いじゃないか・・・・
こりゃ、大変だ。。。

だからと言って、そのままコードに好き勝手なテンションを付け足して演奏しようものなら、何度も録り直して無駄にテイク数を上げるだけ。

どーする??


■困った時は基本に戻れ

鉄則の筆頭、つまりコードトーンでイメージを広げるところに打開策を求めるといい。

まず、このようなコード進行ではセブンス・コードの響きが何よりも強いイメージを残す。
これを自分が素早く吸収するには、トライトーンでコードの繋がりを探るところから始めるといいぞ。

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最後の黒玉は次の小節にあるコードDb7に向かう様を示している

うん。これでいい。。。。

ホントに?

悪くはない。
でも、実はこのトライトーンの解釈は、一つ大きなリスクを抱えているんだ。

それは・・・

二つ目のコードD7以降のトライトーンの繋がりを見てほしい。
完全にクロマチックで繋がっているでしょ?
これって、意外と各々のコードの自覚が無いままに音を出してしまう危険性があるんですね。

いや、ホント、特にこんな風にドミナントコードばかり並んでいると、視覚的に押さえていても聴覚的に麻痺する場合があるんですね。

ほら、そこでドキッとしてる人、いるでしょ?(笑)

そこでこの部分の解釈をもう少し論理的に行ってみましょう。

まず、本来なら、このベースラインに対してどんなコードが来るの?

ドミナントコードの連続というのは一つ一つが転調を表わしているわけではない。
そこには本物のドミナントコードの他に、より印象的なサウンドを得るために装飾された(ダミーな)ドミナントコードが含まれているわけです。

それをどのように見破るか。

まずは、ベースラインはそのままに、本来この調号の調の中で選ばれるはずのコードに置き換えてみましょう。
すると・・・

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ほらね、ドミナントコードは二つに絞られますね。

まず、この曲は調号からすればFマイナー。
つまりFm7の機能を言えばトニック。

トニックの次は何にでも進める・・・

だから最初のFm7は「取りあえず別の括り」として二つ目のDm7(b5)を調号から割り出す。
次のGm7(b5)からはもうおわかりだと思うけど完全にFマイナーの調の

IIm7(b5)-V7(b9)-Im7 of F minor.

その次のBbm7からは平行調のAbメジャーへの転調という図式が見える。

IIm7-V7-IMaj7 of Ab.

この解釈をベーシックに考えると、忙しくドミナントコードが並んで大変という感覚からちょっと「安堵」も生れるだろう。

さて、このアナライズで得た一番の収穫は、本物のドミナントコードがC7ひとつである事。
もう一つのEb7は残念ながら本編ではAbMaj7には進まずにAb7へと進むのでこれもダミー。
最初の譜面に記されていたその他のドミナントコードも全てダミーだ。
でも、ダミーという言い方はよくないのでセカンダリー・ドミナントと呼ぼう(笑)

本物のドミナントの位置と解決されたマイナー・トニックのレイアウトを全編に導入してみるともう少し性格が現れてくるだろう。

冒頭の6小節を置き換えてみると・・・
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ね? 少しずつ本体へと近づきつつあるでしょ?




セカンダリードミナントの連鎖 2012/7/6掲載

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前回の最後に掲出した冒頭の6小節を置き換えた例を元のセカンダリー・ドミナントに戻して表わすと、こうなります。

ここではAセクション全体を示してみます。

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マイナー・セブンスコードへの進行(先週の譜例の他、この譜例の6~7、11~12小節目のC7→Fm7)と比べると遥かに強い(ストロングな)コードの連携に変化するのがおわかりでしょう。セカンダリー・ドミナントを使う理由はそこにあります。


今回のケースは、メロディーが不明、コードネームと調号のみのヒントからソロ(アドリブ)を導き出す用法。
それぞれのコードスケールを判定する前に演奏をスタートしなければなりません。
そこで先週のようにドミナント・コードだけの繋がりの中で、いち早く「ダミー」を見破る例を挙げたのですが、実際にはまだ確証のないままに演奏は進んでいます。(仕事の場合進めなくてはならない)

そんな時にどのような救いの手があるのだろうか・・・?

その一つにはトライトーンを軸とするガイドラインがあります。

コードのrootと5thは他のパート(主にベースなど低音域の楽器)が担当しているケースが多く、それらの音を重ねるのは極力避けるべきです。
そこで、これまでヴィブラフォンやマリンバで必ずカンピング(Comping=コードによる即興的なリズムとヴォイシングを伴う伴奏)の左手の基礎(4マレットの場合)として弾いていたトライトーンをメロディーのガイドとするのです。

これなら単純なラインが生れるので、それに対してこれまでココで教えて来た様々なアプローチを施す事によって「初見ながらコード進行から大きく逸脱する事なく」ソロを進める事が可能となります。

原則ながら、ソロで使える音域を決めておきましょう。
あまり音域が低いと低音域の楽器と干渉してしまう為、さらにあまり高音域であってもコード・サウンドとの兼ね合いを探る事が不可能。
程よい音程の中で最初は様々な転回なども練習する必要性があります。

【ソロとして使う音域】
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では、この音域の中を、まずトライトーンを軸として、日常的にどのような訓練を行っておく必要があるかについて書きます。

■コードに対して一つのトライトーンを一方向に結ぶ練習

コードの並びに沿って、トライトーンを1つ選択し、一定の方向に並べて演奏する訓練。
ソロとして使う音域を超えそうな場合は反転した方向へとシフトします。
尚、小節にコードが1個の場合は流れをそのままに(この場合は二分音符)トライトーンを転回してラインの流れをキープしてください。

練習のコツは、いつも違う音域から違う方向にスタートする事で、コードを見ながら演奏する訓練になります。

いつも同じ音から同じ方向にスタートしているとコードネームから読みとったトライトーンを弾いているのではなく、前になぞった音を単に鳴らしているだけになります。音楽の専門教育を受けた人は特に要注意です。

では、こんな感じで演奏するのを参考に、自分のバリエーションを考えてください。

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とっても簡単。

じゃあね、今度は同じテンポで一つのコードに対してトライトーンを二つに増やしてみてください。

はい。

さっきが簡単だったのだから、今度も大丈夫でしょう。

■一つのコードに対して二つのトライトーンを一方向に結ぶ練習

では、さっきと同じテンポですよ!

尚、小節にコードが1個の場合は流れをそのままに(この場合は四分音符)トライトーンを転回してラインの流れをキープしてください。

ではやってみましょう。

せ~の~!

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@@;;

目が回った人もいるんじゃないでしょうか。
でも、この練習、どんな時でもコードに動じない度胸を養いますから、今、自分の手元にあるコード譜を使ってすぐに練習してみてください。

もちろん、最初の優しいヤツから。(笑)

コードネームに7thが記載されていない場合は、自力で7thなのかb7thなのか割り出してみましょう。





セカンダリードミナントの括り 2012/7/13掲載

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目の前にはヴィブラフォン。
譜面台にはコード譜。

それでは一度オケを聞いてみましょう。

はい、ではソロ、よろしくね~。
では録りま~す。



当たり前と言えば当たり前だけど、これが仕事の現場だ。

譜面にはメロディーは書かれていない。
調号はある。

さぁ、そんな時にどうやってソロを演奏するか・・・・

先週はコードのトライトーンに着目して、どのような訓練方法があるかを解説した。
あくまでも“イメージを膨らませる”準備体操の段階だ。

今週は、もう少し客観的にコード譜を見る案内を書こう。

まず目の前にある譜面がこれだ。

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これだけの情報でソロを演奏せよ、もちろんたんまりギャラは弾むがテイクは2つまで、3つめからはギャラを差し引く(笑)。

まぁ、そんな現場は無いが、前にも述べたようにスタジオというところは時間辺りのコストが軽く数十万掛かるケースもざらなので、モタモタしてたら二度と仕事に呼ばれない厳しい世界だ。

そこまでのプレッシャーを浴びながらも、それを跳ね返せるだけの自信があるかないかで生き方は決まる。

ちょっとしたミストーンなら素早くパンチイン、パンチアウト。自分のソロのどこからでもそれが出来なければならない。それだけ客観的に自分の演奏を記憶していなければ出来ないわけだよね。

すいません、もう一度最初から・・・・なんて言ってたら、時間ばかりか演奏のクオリティーまでロストしてしまう。大概の場合、ソロはファーストテイクが良く、細かい部分の修正が必要な時のみセカンドテイクを録音する。そしてその二つを比較してどちらかに決定するか、細かい修正のパンチイン、パンチアウトを施して終わりになる。

シチュエーションがそんな状態なのだから、素早くこのコード進行に“乗っかる”必要がある。

そこで、まず、ザーっと譜面を見て、この情報からどのようなポイントが押さえられるだろうか。
これが肝心だ。

1.セクションの最初だけマイナーコードになっている
2.後半のセクションの最後だけマイナーコードになっている
3.マイナーコード(Fm7)の直前はC7なので調号等含めるとHMP5の可能性あり
4.マイナーコード以外はドミナントコードばかり並んでいる
5.ドミナントコードは五度跳躍の連続がマイナーコードの直前のC7まで続いている


つまり、このポイントで想像出来るのが、Fm7とその直前のC7以外は五度跳躍で並んだセカンダリードミナントという事だ。

従ってC7→Fm7という結び付きはマイナーのケーデンスとして一括り。跳躍のスタートはFm7の次に来るコード、という事になる。

するとD7がスタートで最後はDb7。

この間のドミナントコードを先々週のように「もしも、本物とダミーに分割したら・・・」の例のように、二つずつ隣り合うドミナントコードを一括りとして考えると、ドミナントコードの連続というプレッシャーからかなり余裕が生れる。

そこで、その二つを結ぶ簡単なモチーフを作って検証してみよう。

まず、本物と解釈する側のドミナントコードは、曲の流れの中で確固たる位置にいるのでそう簡単には崩れないものなのでアプローチノートを挿入。
ダミーと解釈した側のドミナントコードには余計な音を入れると存在が危ぶまれる(つまり崩れる)ので何もしないでおこう。

するとこんなモチーフが出来る。

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D7はG7に行き、C7はF7に行く、つまりこの“行く”という感覚が和音の解決に近い感覚であるのを自覚してほしい。
つまり先々週にわざわざこの部分をマイナー・ケーデンスに置き換えて検証したもの、実はこの“解決”感を高めるためだった。(D7はGm7、C7はFm7に解決)

これを軸に、セクションの中をモチーフで結んでみよう。
それによってこのコード進行の性質が浮かび上がって来るはず。

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※C7→Fm7のところは先に説明した通りHMP5で結ばれるのでb9thを含む

続いてのセクションの譜面がこれ。

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ここでのポイントを押さえると・・・

1.ふたつのコードの繰り返ししかない
2.Bbm7に対してHMP5の関係にあるドミナントコード(F7)と解釈できる

ここは簡単に解釈すればいいのでペンタトニック・リックを挿入しておこう。

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続くセクションの譜面はこれ。
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次のセクションも最初は順調にAセクションと同じ解釈で行ける。 ここではBbm7が前のセクション最後のF7からマイナー・ケーデンスで繋がっている。
従ってドミナントの五度跳躍のスタートはG7からだ。

アプローチノートには↓を記しておく。
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さあ、ここで一つ課題が・・・・
後半のGb7とDb7の繰り返し。
コレ、どのように解釈するのが良いのでしょう?
この二つのコードが繰り返されると、どちらが「本物」で「どちらがダミー」のドミナントコードなのでしょう?

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このコード進行は、よくブルーノートと混同して演奏がゴッチャゴチャになりやすいケースなので、次回に詳しく。





セカンダリー・ドミナントの整理 2012/7/20掲載

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何とか初見の状態でコード進行にガイドを見出しながら進んで来て「Cセクション」。

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取りあえず先々週の応用で最初の四小節は道筋が付いたのだけど、続くこのコードの繰り返しで要注意信号が発令。

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これまでは順次ベースの五度跳躍が連続する単純な仕組みだったが、ココで二つのコードを繰り返し留まってしまう。

どちらもドミナントコード。
すると、やはりどっちがダミーなのかを把握しておかなければアプローチノートも設定できない。

そこでここまで継続して来たモチーフをコードの変り目に挿入する事で、どちらがダミーなのかを検証しよう。

現在試しているのは、アプローチノートをダミーのドミナントコードに挿入するとサウンドが壊れてしまう、という聴覚的な判定基準。

まずはGb7からDb7のところにこれまでと同じ3rdの音に対してクロマチック・アプローチを挿入し、次のコードに対してモチーフを当てはめてみる。

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これはワークしない。
もちろんコードの連携がこれまでの五度跳躍と異なってしまう点は大きいが、それだけではない。
まず、これまでの流れを著しく阻害するAをアプローチノートに取り込む事に違和感を覚えるし、五度跳躍用のモチーフを当てはめると次のコードの最初の音(このモチーフは3rdに設定)に半音で繋がってしまい、メロディーにヘンな終息感が生まれてしまう(メロディーが解決してしまう)。

これは何を意味するか?

直前のコード進行をもう一度確認してみよう。

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一小節目の三拍目のG7がC7に、F7がBb7に、Eb7がAb7に、そして最後のDb7はここのGb7に繋がる。
この繋がりでは前者が本来のドミナント、後者がいわゆるダミー的なドミナントになる。
つまり、ダミー的なコードをそれぞれ同じrootを持つメジャーセブンスコードに置き換えると、その跳躍が生むイメージを連想できるだろう。

G7 → CMaj
F7 → BbMaj
Eb7 → AbMaj
Db7 → GbMaj

これなら何の問題も起こらないが、両方ともドミナントセブンスコードを用いたくなる感覚というのがある。
ブルージーなサウンドの演出だ。
単純に言ってしまえば上記の例のドミナントに続くメジャーセブンスコードを、半ば強引に(ブルージーに)ドミナントセブンスコードに置き換える、という事だ。
しかし、音の流れはどんなに作為的な置き換えを行っても、音本来がイメージする音に向かいたがる。
それに相反する作為的なコードの置き換えにストレスを持つ場合があるわけだ。

ドミナントコードを連続させるとどちらか一方が一時的な解決先となるケースが多いのも、本来であればメジャーセブンスコードに解決する部分を強制的に変換しているからで、逆にその結びつきを見破れば、演奏中に脱線して“どこか”へ行ってしまう事は避けられる。

おもしろいですね、ドミナントコード同士でも結びつきによってそれぞれイメージが異なるんですから。
そして、我々の聴覚というものも優れた予知能力を秘めている、という事です。

似たようなケースにメジャーセブンスコードの連続というのもあります。

AMaj7-GMaj7-CMaj7-BbMaj7・・・この時に調号は用いられていない。

このメジャーセブンスコードの連続の場合、AMaj7とGMaj7、CMaj7とBbMaj7に分けられる。
音楽は次に対して前の音の影響が及ぶようになっているからAMaj7の次に繋がるGMaj7には、AMaj7の影響が残っているものだ。

このコード進行に初めて接した時に私達はどうすれば良いのか?

次の音に及ぶ影響を予想しながら演奏するわけだ。

すなわち、AMaj7というトニック的なメジャーセブンスコードを如何にすればGMaj7というサウンドに生まれ変わるか、という事に集中するわけだ。

AMaj7のコードスケールは、

A-B-C#-D-E-F#-G#

これを如何にすればGMaj7のサウンドを発する事になるのかを考える。この際に理屈は抜きだ。

1.(AMaj7を演奏中に)GMaj7の配列に近い形でスケールを並べる

G#-A-B-C#-D-E-F#

2.この形↑からGMaj7というコードサウンドを生み出すために必要最低限な音の変換をすると・・・(赤が変換した音。他はそのまま)

G-A-B-C#-D-E-F#

実は理論だけで判定しようとするとAMaj7とGMaj7が並んだ場合の理屈を引っ張り出す必要が出て来るのだけど、あっという間に進行するコードに理屈を引っ張り出してる余裕はない。
一番簡単で、納得しやすい方法を知るのも演奏には必要だ。

同じ方法でCMaj7とBbMaj7の繋がりを判定すると・・・

CMaj7のコードスケールは・・・

C-D-E-F-G-A-B

1.(CMaj7を演奏中に)BbMaj7の配列に近い形でスケールを並べる

B-C-D-E-F-G-A

2.この形↑からBbMaj7というコードサウンドを生み出すために必要最低限な音の変換をすると・・・(赤が変換した音。他はそのまま)

Bb-C-D-E-F-G-A


さて、ドミナントコードのケースに戻ろう。

Db7からGb7への進行は、Db7からGbMajという形が本来の姿である事がわかるだろう。
なので、このGbをrootとしたコードをダミーのドミナントコードと割り出す事が出来る。
従ってこの二つのコードが繰り返されるのであれば・・・

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↓のアプローチノートならコード自体ビクともしない。
この部分で「ブルージーに!」と言われてブルーノートを使って演奏するなら、多少の事ではビクともしないDb7に対して用いるべきで、ダミーの為に崩れやすいGb7のところにはブルーノートという感覚でのアプローチはなるべく用いないほうが良い。つまり、“なんとなく”調性が漂っている時に何でもブルーノートという感覚でのアプローチは調性を崩してしまう危険性がある、という事。

この場合、Db7のところではGb7のb7thに該当する“E”がブルーノートの#9thとして使いやすい。

極端な例だけど、こんな譜例からこの部分のサウンドの意図を察する事も出来ると思う。

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似た者同士ながら、微妙に違うところをどんな曲でも初見で演奏しながら予測出来るようになりましょう。




想像力:今度は調号も無い!? コンテンポラリーな曲で 2012/7/27掲載

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古典的なスタンダードの例だけでは現在のジャズの現場の事例に適合しないので、今日はコンテンポラリーな事例を。

インスト音楽としての発展が急速に進んだ70年代以降、ミュージシャンが取り上げる曲は専門の作曲家の作ったものから、ミュージシャン自身が自らの音楽を確立する為に作曲するオリジナル曲へと主流が移ってきました。

より面白い音を、よりおもしろい響きを、という方向で様々な周囲の音楽と融合しながら、ジャズがインスト音楽として生き残って行く為に選んだ道は、大きな枠組みのジャズの中のカテゴライズ、つまりピバップだとか、クールジャズだとか、モードだとか、スイングジャズだとか、ジャズロック、フリージャズ等々、、、これまでジャズという枠組みの中で歴史的に区切られていた「流行」的カテゴライズから、より個人のスタイル的カテゴライズへと細分化されて行ったわけです。

「ジャズと言えばナニナニ」
「トランペットと言えばダレソレ」
「新しいジャズと言えばカクカク云々・・・」

こういう大雑把な横並び的な枠組みをこの時にジャズは放棄したわけです。
最初の内は、新しさばかり求めて古きを否定するところから始まりましたが、この細分化された個人的スタイルが成熟すると同時に、ジャズは古典から現代までが共存する一つの成熟したジャンルを形成するようになりました。

このような流れの中で、作曲の面でも大きな意識改革が起こり、新しいサウンドを演出する為に旧来のやり方からより自由なやり方へと進化した面があります。

その代表的な事例が、調号を用いない記譜スタイル。

一時的な転調のスリルや、展開としての衝撃をスコアリングする際に、従来のように一つのキー(調)の中だけではストーリーを負えなくなったのです。

今日は、そんな譜面に出会った時の事例。

ギターリスト、ジョン・スコフィールドのロマンチックなワルツに“Do Tell”という曲があります。
特にこの曲の展開部は、リリカルで何度繰り返して演奏しても心に沁みて大好きです。
しかし、この曲はこんな風な記譜になっているのですね。

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ラストタイムはこの部分をBISしてソロを演奏しますが、さて、それぞれのコードスケールを探ろうにも、調号がありませんから初見の時は困惑してしまいますね。

もちろん、この曲はCメジャーのキーではありません(笑)

ここで、調号を用いない譜面のある程度の大原則を。

・基本的にコード間の結び付きによる調性が確立されていない部分はノン・キーシグネチャー(調号が無いまま)

つまり、コードとコードの繋がりが示す調性が手掛かりとなるわけです。

これまでのコードスケール・アナライズの順位(1位コードトーン、2位メロディー・ノート、3位コードの連携、4位調号)の選択肢から、形の上では4位が消えてしまうわけですね。

このコード進行をよく見ると、ある事に気付きます。
それは・・・・

||マイナーセブンスコード|→| next ||
マイナーセブンスコードを経て、新しい何か(展開)に進み、再びマイナーセブンスコードを経て新しい何か(展開)、の繰り返し。

この「何か」の部分は、最初はブランクで良いでしょう。

と、言うのも、この「何か」の部分に登場するコードはドミナントコード系が多く見えますね。
ドミナントコード系は、ジャズでは複雑なコードスケールの形が何種類もありますからチョイスに若干時間がかかります。
そこで、初見で演奏を進める場合は、取りあえずブランクとしてコードの流れやバックが出すコードヴォイシングに「聞き耳」を立てるのに集中します。

そこで、比較的チョイスの少ないマイナーセブンスコードのコードスケールを想定しながら演奏を進めましょう。

チョイスが少ないと述べましたが、それはこのようなコンテンポラリーなジャズの場合、一つ一つのコードの連携に最小必要限の「主張」を盛り込む場合が多いのです。
つまり、マイナーセブンスコード一つでも他のコードの助けを借りずに調性を誇示できるコードスケールを有するもの、すなわち、特定の調の影響を強く受けるアヴォイドノートを含まない、サブドミナント系ドリアン・スケールである場合が多いのです。
これは、古典的なジャズのコード進行にみられるIIm7→V7のIIm7と同じスケールでもあるわけですね。

そこで、特に問題が無ければ、この部分のマイナーセブンスコードをドリアン・スケールと仮定して、次のように一定の形を当てはめて演奏し、いろいろな事を探る土台を作ります。

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コード進行をみる限り、Bm7-E7(b9)とFm7-Bb7(b9)のところのマイナーセブンスコードは確実にドリアン・スケールでしょう。
また、続くEbm7-A7(#11)のところも変形しながらもドミナントセブンスコードへの進行なのでドリアン・スケールと仮定して問題無さそうです。
この全体の流れからAbm7もドリアンスケールと仮定して問題無さそうです。

では、一つテーマを決めましょう。
各コードの最初に弾く音を決めるのです。

実音で連想するのではなく、コードスケール上の何の音であるのかを。

そこで、ドリアンスケールですから、安心して使える9thを最初に弾く事として、下行するモチーフを描いてみましょう。

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それぞれのモチーフの最後の音が、次のコードに進行した時、なるべく近くてアヴォイドノートとならない一音として何が聞こえて来ますか?

同じモチーフを二拍めから始めて、次に来る音を想像してみましょう。
これを想像する事で、次のコードのコードスケールも連想出来るはずです。

理論と想像。
この二つのフィルターを通してこの部分の「想像的アナライズ」が始まるのです。

面白いでしょ?