Archives-13 人気シリーズ【音楽的読唇術】The Girl from Ipanemaの巻

音楽的読唇術 The Girl from Ipanemaの巻

2012年から13年にかけて金曜ブログで人気のあった「音楽的読唇術」と題したシリーズ。ジャズのインプロヴィゼーションは全くの白紙の状態から音を選りすぐるのではなく、曲の中のコード進行に沿いながら自分の発言をする。その時にソロを演奏している人間は周りの人間に対して自分が描きたいイメージを何らかの形で音として発信している。それをうまくキャッチするには、ソリストが描くイメージをその瞬間のメロディーとコードの整合性から瞬時に割り出して最良のクッションを提供しなければならないし、ソリストはそれが何であるのかをなるべく周りにわかりやすく示す必要がある。このコミュニケーションを僕は「音楽的読唇術」と呼んでいる。いわばインストによる即興演奏は一種のテレパシーだと思ってもいい。(追記/2022年7月2日 赤松敏弘)

洗練されたインプロを考える - 跳躍の練習 2012/6/8掲載

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市川秀男(p)Group @ Yokohama AIREGIN w/赤松敏弘(vib)上野哲郎(b)二本柳守(ds)

跳躍。
コードスケールを割り出す事が出来るようになったら、インプロに使える音の裏付けが取れたわけだから、自信を持って音を出せばいいわけだ。

ソロに限らず、コンピング(コードを見て瞬間的なヴォイシングとリズムでソリストをフォローする伴奏の事)に於いても、テンションの組合せは自由だし、リズムのチョイスも自由だし、何のストレスもなくソロのバックを務める事が出来るはずなんだ。

ところが・・・・

ソロなのに、いつまで経ってもスケールの一部分を弾くだけでそれ以上にメロディー・ラインを発展出来ない・・・・
そんな人が意外といるのです。

「遊ぶ」

と、言う事を楽器でチャレンジした事の無い人に多く見られる傾向なのですが、次の展開を予測しながら音を出す、というスタンスに早く慣れる必要がありますね。

「遊ぶ」

と、言うのはどういう事なのか?

やたらめったらに音を出すのは、フリー・インプロヴァイズ。
そこで出した音に意味があるかないかは、奏者の意識次第。
自分が次の音を予測しながら演奏しているのか、適当に音を叩いているだけなのかは、「うん。今のいいね。もう一度やって」と言われて再演できるかどうか、で決まる。

「自分がさっきまで何をやって遊んでいたのか」ぐらいは覚えていなければならない。
それぐらいの記憶力は演奏中に働かせる訓練をしなければね。

フリー・インプロヴァイズとデタラメの境目ですら記憶力が大きく作用するわけだから、コードに沿ったインプロヴァイズなら、もっと記憶に残しながら演奏出来るはずだ。

それが、楽しい「遊び」なら、きっと「記憶」できるはずだ。

■ターゲット・ノートに向かう跳躍でメロディーにコードサウンドを取り込む練習

例えば、“The Girl from Ipanema”の冒頭八小節でチャレンジしてみましょう。
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まず、ターゲット・ノートを決めます。
単純に、各コードのコードスケール上にある9th(b9thを含む)をターゲットにしてみましょう。

するとこんな感じのターゲットが並びます。

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基本ですね。
それぞれのコードで9thをチョイスするだけです。
簡単。

で、

このままでは“いつものように”殆ど同じ音域の中でモゴモゴしそうなので、思いっきりこんな指令を自分に出してみましょう。

「次のターゲット・ノートはすぐ近くの音ではなく、オクターブ上、又はオクターブ下に近い位置の音を選ぶ」

なになに?
すぐ隣りとか、場合に寄っちゃ同じ音で繋がるのに・・・・

モゴモゴとは、こんな音列になってしまう場合の事です。↓

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これ、例えば1~2小節目が FMaj7 、3~4小節目が G7 だったとしましょう。
コードが伴奏にあればこのメロディーは心地よく聞こえるかもしれません。
しかし、コードの伴奏無しにこのメロディーを聞くと、どのハーモニーが後ろにあるのか想像出来ません。
メロディーだけでは、いつFMaj7からG7に替わったのかも定かではありません。
コードスケールに頼り過ぎると、絶対「正解な音」をチョイスしているにも関わらず、説得力の無いメロディー・ラインを作って安心してしまう場合があるのです。

良いインプロヴァイズとは・・・・
メロディーだけからでも、コードの流れが聞こえて来るようなソロであるべし。

何がここで足りないかといえば、やはりハーモニー的な動き、つまり跳躍です。

だから・・・

思いっきりザックリ行け! ですか・・

これも跳躍に慣れるためです、がんばって跳躍してみましょう。

すると・・・

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気持ちいいくらい跳躍しましたね。
これでいいんです。

では、次に跳躍の間をハーモニーで埋めながら動いてみましょう。

ここでは「遊び」として簡単なルールを作ります。

ターゲット・ノートに向かう時は、該当する小節のコードトーンを選んでステップする事。
但しb9thを含むコード・スケールの場合はrootの替わりにb9thを使用する。

すると・・・・

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ほらね、ちょっと跳躍に自信が出て来たでしょ?
今まで音階を並べただけだったラインをひとつ飛ばしとか、コードトーンとかで跳躍する勇気を養ってください。

で・・・

跳躍先のターゲット・ノートの設定やチョイスするコードトーンの音域には自由度があります。
どんなコード進行でも訓練は可能ですが、最初の内は「ゆっくり」としたテンポで、ステップしながら次のターゲット・ノートを選ぶ、というのが訓練の目的となります。

ステップの具合はコード進行によって大きく異なります。
まずは、ゆっくりしたテンポで、この譜面の八分休符の位置には次の小節のターゲット・ノートをセレクトしているように練習してください。

[ステップがターゲット・ノートを超える例]
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[ステップ・レンジがターゲット・ノートから遠い例]
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[上記では不自然と感じてステップ・レンジをターゲット・ノートに近付けた例]
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洗練されたインプロを考える - さらに飛躍の練習 2012/6/15掲載

“The Girl from Ipanema”でソロのアイデアを公開中。
今度は先週の用法をこの曲のブリッヂで検証してみましょう。
まずは各コードのコードスケールを割り出して準備を。

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このブリッジのコード進行は、最初とても難しく感じました。
しかし、メロディーを弾きながら、コードトーンを弾き、冷静に頭の中でメロディーにも無い、コードトーンにも無い、間の音を想像して埋めてみると、何だかとてもスリルがあって面白く、ドラマチックな感激がありました。その感動が未だに忘れられないからインプロをするのです。

ここでコードスケールの話しを。

この部分のコードスケールを描きます。

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それぞれのコードスケールにちょっと「気になる」音を一つ見つけてマーキング。
その「気になる」音がその箇所のコードスケールを最も強く印象付けているのです。

演奏する時に、マーキング(↓)された音からメロディーを始めてみるといいでしょう。

次はもう少しシステマチックに。

コード進行を最小限の単位で連携させると、この曲のこの部分は2小節単位で「ハーモニーが連鎖」しているのがわかります。もう少し抽象的に書くとメロディーと同じようにハーモニーにも「動機」→「展開」という結び付きがある、という事です。

演奏する上で、この結びつきを知っておくのは重要で、その流れに沿って自然にメロディーを連想すれば良いわけです。

その核となるのが最小限の連鎖。
つまり二つのコード間で音が変化する音程の最小単位、「半音」の変化を見逃さないということです。

二小節単位で結んでみましょう。

まずは・・・

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それぞれ前のコードスケールから半音で結ばれる音をピックアップしただけですが、コードを弾きながらこれらの音を結ぶと綺麗なラインが生まれます。
あ、今アップして気付いたんですがB7(#11)の所はナチュラルを入れ忘れました(笑)
ちゃんと解説を読んでないと「不思議ちゃん」になってますよ。

まだあります。

先ほどのラインは半音で次のコードのroot(コードの根音)に解決する超安定志向でしたが、演奏の上ではベースなどのハーモニーを支える楽器やパートが必ず出しているrootの音に重複してしまうとメロディーが終わってしまったり吸収されてしまったりして面白味がありません。

そこで、なるべくrootの音に向わない位置での半音の連携を見つける事にします。

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この動きを最初に発見した時の感動は忘れません。
アヴェイラブル・ノート・スケールの存在を知る前の事でしたから。

譜面では3-4小節目にダブルバー(複重線)がありますが、ココではあまり意味がありませんから無視して二小節を一つのブロックとして見てください。
ちなみに4小節目の音はC。小節を超えてタイで結ばれない場合は調号通りにリセットされる大原則に従って書いています。

次はコードスケールによる連鎖の練習。

コードスケールは文字通りそれぞれのコードが固有に持つスケールの事ですが、練習に於いてコードの根音(root)から始めるスケール練習で終わってしまいがちです。
これは他のスケール練習でも言えるのですが、楽器のフルレンジで該当する最低音と最高音を結ぶスケール練習に変更する事を薦めます。

いつもコードの根音からしかコードサウンドが連想できない、と悩んでいる弟子達は根音からスタートするスケール練習しかしていませんでしたから。

同じ原理で、コードスケールの連鎖を体得するには、(ほぼ)同じレンジから同じ音符の数で上下するコードスケールを並べて連鎖の練習をするのです。

この時にどこかにマーキングとなる音を設定してハーモニーの動きをチェックするとより感動的な練習に繋がります。
僕は上下する音が同じ拍で聞こえる場所にマーキング(↓)するのをお薦めします。

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ここまでが、まだアヴェイラブル・ノート・スケールを知らない高校の頃に「大発見(笑)」して感動していた頃の練習マテリアルです。
ハーモニーとメロディーとの強固な連携に興味が沸いたのは言うまでもありません。

少なくとも、それまでに楽器のフルレンジで普通の長調・短調のスケール練習をしていたのでこの発想に結び付いたと思うのですね。

これを少しずつ発展するヒントについて続けましょう。

・音楽には「理論」から入らない。→音楽に先入観を持つな!全てに興味を持て!

自分の中に「興味ある音」が無い内に理論をかじると変な固定観念を生む事があります。

・「慣れ」たと思ったら理論を勉強。→慣れだけで演奏するな!時代と共に変化しよう!

そういう事の繰り返しで自分の音楽も演奏も確立して行けばいいのです。
構造はシンプルなほうがいい。

ここでまだ出来る事はあります。
コードを見ながら演奏する時に、ある一定の音域にメロディーを閉じ込めると、コードの流れをメロディーに反映しやすくなります。
コードが変わっても、ほぼ同じ音域の音からメロディーを始め、ほぼ同じ音域の音でメロディーを終わるようにすると、コードスケールを横に繋ぐ演奏が出来ます。
出来るならメロディーのリズムも同じ、当然音の数も同じ、という「制約」の中で発見をしてみましょう。

最初にメロディーを始める位置を決めます。
冒頭のコードGbMaj7の7th辺りから単純に下降するラインと、もう一つ別の位置から下降する二つのラインを設定します。
この時に同じ音は(オクターブも含めて)それぞれのラインに含まないようにします。

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(最終小節のC#はCが正当。シャープを消し忘れていました。ごめんなさい)

次にそれぞれのラインを個別にまとめたメロディーを並べてコードスケールを横に繋ぐ練習をします。

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コードスケールの変化によってメロディーが徐々に変化して行くのがわかるでしょう。
その時に半音のエッジの部分がそれぞれのコードサウンドを特徴付けているのがおわかりいただけると思います。

■シンプルなラインを使った演奏-ダイアトニック・ライン

コードの連携がそうであるように、メロディーの連携に於いても「半音」の印象は「全音」の結び付きよりもドラマチックです。
シンプルなラインを今度は8小節間連続下降させて、その時々(コード毎)の変化を楽しみましょう。
それぞれのコードのエッヂがキャラクターの決め手という事です。

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ではここで質問。
このシンプルなラインは9小節目に来るコードGm7では何の音に進むでしょうか?
Gm7はこの譜面の調号でコードスケールを判断してください。

答えは本日の文末に。(→質問1)

■シンプルなラインを使った演奏-アプローチ・ライン

同じ要領で今度は可能な限り同じ音域の音だけでシンプルなメロディーを作ります。
次のコードの直前に来る音はアプローチ・ノートとして半音上の音をコードスケールと関係なくチョイスします。(↑=アプローチ・ノート)

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アプローチ・ノート(↑)の位置にコードスケール上にある音、本来ならアヴォイド・ノートとなるべき音、などが来る場合もありますが、それは解釈の相違です。
アプローチ・ノートは次に来る音に対して設定する音なので全ての半音が使えます。
この場合はメロディーの流れが下降しているので半音上の音を設定しています。
つまり、そこに設定した音が「たまたまコードスケール上にある音と重なっただけ」なのです。

では、本日二つ目の質問です。
このメロディー・ラインは9小節目に来るコードGm7では何の音に進むべきでしょうか?
Gm7はこの譜面の調号でコードスケールを判断してください。

答えは本日の文末に(→質問2)


本日の答え






■質問1/C




■質問2/A


では、再びターゲットノートの話しに戻ります。

これを前回と同じように、次のターゲット・ノートに向けてコードトーンのステップで結ぶとメロディーの跳躍が起こるわけで、これまでどうしたらメロディーが「動くのか」を悩んでいた人には心強い味方が登場したわけです。
ちゃんとコードトーンによるステップという動機もありますからね。

今回はそのステップからrootの音を省いて9th(コードスケールによってはb9thも含む)に置き換える、というシンプルな作業。
この9th(b9thを含む)は元々、ターゲット・ノートとして選んだ音なので、メロディーとして取り込むのに抵抗は無いはずです。

FMaj7とG7の場合の例を示します。

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シンプルだけどメロディーの持つニアンスの変化にはとても効果的な方法です。

さて、これでこのブリッヂの部分を全部演奏してみましょう・・・・

と、

その前に、

さっきのターゲット・ノートの設定の譜面に最後の4小節が欠けていましたね。
実は、この部分で質問を受けたのでちょっとピックアップします。

この部分のメロディーを見ていただけるとお気づきかもしれませんが、Am7の時にメロディーに思いっきりアヴォイドノートの“F”が含まれていますね。
この“F”、つまりb13thは使っても良いのですか? という御質問をいただきました。

ズバリ言いますと、「使ってはいけません」。

アントニオ・カルロス・ジョビンをバッサリと斬りますか!?

いえいえ、そんな気はさらさら無く、むしろ最も尊敬する作曲家でもあります。
ただし、この曲が作られた1962年当時の音楽状況では「やむを得ない」、と言ったほうが良いでしょう。

もしも、これが今なら、たぶんこのように表記されるはずです。

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つまりこのメロディーには“F”の音は不可欠である事と、このメロディーには“A”から積み上がるコードサウンドが不可欠である、というアントニオ・カルロス・ジョビンの意図を尊重した形を表わす表記が現在では存在する、という事を知っておいてほしい。

ただし、この部分をF/Aとする事なく、オリジナルをリスペクトしてAm7と表示しているので、key of F の IIIm7 としてアヴォイドノートが二つ存在する。つまり“Bb”と“F”だ。

この部分のAm7はb9thなのでアヴォイドノートをターゲット・ノートには出来ないから11thで代用する事とする。

今後同様の問題が起こった場合は、このようなテンションで対処をしましょう。

b9thがアヴォイドノート → (11th) (#11th) or (13th)
11thがアヴォイドノート → 9th (b9th) & 13th or (b13th)
b13thがアヴォイドノート → 9th (b9th) or (11th) or (#11th)

( )内は該当するコードスケール上にアヴォイドノート以外で存在した場合のみ有効

さて、では、このブリッヂの部分でどのように跳躍したメロディー・ライン(ステップ・ライン)が作れるだろうか。
前回も解説したが、ステップ・ラインの音域を次のターゲット・ノート寄りとするか、現在のターゲット・ノート寄りとするかはそれぞれの趣向で判断するので自由だ。

僕なら、こんな感じで演奏するなぁ・・・・

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曲はこのままFMaj7へと進むので最後のメロディーは短三度上のGを目指します。

答えは一つではないから面白いんだよね。

洗練されたヴァイブやマリンバのインプロを考える - 跳躍を結ぶ練習 2012/6/22掲載

“The Girl from Ipanema”でソロのアイデアを公開中。
今度は先週の用法をさらに発展させてよりターゲット・ノートを浮かび上がらせましょう。

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まずは各コードのコードスケールアナライズが完了している事を前提にスタートします。

先週作ったターゲット・ノートに対してのステップ・ラインをベースとして、そのままではあまりにも唐突なので最小限の装飾を行ってみましょう。

まず、先週のステップ・ラインはこんな感じでした。

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このままでは、メロディーがターゲットとした音域があまりにも唐突な跳躍を持っているのでメロディーがラインとして繋がりにくく聞こえる部分があります。

面白いもので人間の耳はある程度の高音域、或いは低音域での跳躍よりも、常用音域における半音程の動きのほうに敏感。
つまりある程度の高音域の中で動き回るよりも常用音域でのちょっとした動きのほうが目立つという事です。

このステップ・ラインとターゲット・ノートによるメロディー・ラインであれば、4小節目から5小節目にかけてのステップよりも、8小節目から9小節目にかけてのステップが気になる、また、10小節目から11小節目にかけてのステップも気になる、という事です。

では、この部分にジャンプしやすいように助走を加えてみましょう。
そのニアンスの変化を弾き比べてください。

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全体のメロディー・ラインの流れと、8小節目で新たに誕生したニュー・ステップ・ラインから新しいストーリーが始まったのがおわかりいただけるでしょう。

規則正しいステップ・ライン(ターゲット・ノートに対する)はとてもシンプルで使いやすいのですが、画一的なモチーフの連続となってしまうとせっかく音的に有機的な根拠を伴う動きを得たのに音楽的には「ワンパターン」となって飽きられてしまいます。

そこで、少しこのステップのラインの中を装飾してみましょう。
ただしターゲット・ノートとステップラインによる大筋のストーリーは変えません。

先の例の要領で他の部分にも「助走」を加えます。
この「助走」をカツカツに増やすとまた「ワンパターン」に聞こえてしまいます。
あくまでも、それぞれの部分の、一箇所らしい「助走」を加えるのがコツで、全体の流れを遠目にみれば、「なるほど! 大筋は全然変らないのね!!」という形に納めるのです。

このサジ加減一つで、インプロのメロディー・ラインのボリュームなのか、曲のテーマのメロディー・ラインのボリュームなのかに分かれます。

あくまでもインプロのメロディー・ラインのボリュームに留めるように。

では、先ほどの譜例で手を加え無かった箇所にほんの少し「助走」を足してみると、こうなります。

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■ターゲット・ノートの設定は御自由に!

ターゲット・ノートは、実際の演奏時はその瞬間に自分で設定するものですから、あまり複雑な事をやろうとしないのがベストです。
そのかわり、ワンパターンは避けるべきで「この人、いつもテンションの9thから演奏するねぇ」とか思われたら(バレたら)、凹みますね。

でも、意図を持って音を出すという行為に間違いはありませんから、形を「型にはめない」ような柔軟な反応練習を心がけると改善されます。

例えば、次のようなターゲット・ノートの配置を連想しみましょう。
奇数的なターゲット・ノートと偶数滴な動きのターゲット・ノートを音程で言えば高低、ジクザグに跳躍してみました。

テンションはメジャー・コードやドミナント・セブンスコードは9th(コードスケール上にあるb9thも含む)、マイナー・セブンスコードはコードスケールの判定が曖昧でも安全な11thを使っています。

【ターゲット・ノートの設定】
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さて、これもある程度の跳躍がありますね。
そこでターゲット・ノートとターゲット・ノートの間(つまりコードとコード)を繋ぎやすくする為の音を想定してみましょう。
その繋ぎ目の音には、過去に学習した隣り合うコード同士のコモン・トーンを選びます。
但し、最後の4小節間は次のコードまでの時間が短いのでターゲット・ノートの方向にあるコードトーンを選びます。

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追加したコモントーンは両方のコードに共有する音ですから、この音をメロディーに取り込む事によって小節とコードを跨いだメロディーが作れます。

これまで「一つのコードの中でメロディーが完結して長いメロディーが作れないね」と言われていた人には朗報ですね。

小節を跨ぐ、というテーマで考えると、僕は次のようなメロディー・ラインを描きます。

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音の持ついろんな表情、いろんなアイデアを自分で設定して、それをどこまで持続出来るかを、いろんな曲で試してみるとより自分のモノにする練習的な効果があります。