Archives-12【人気シリーズ】音楽的読唇術 Con Almaの巻

音楽的読唇術・名曲“CON ALMA”の巻

ジャズのインプロヴィゼーションは全くの白紙の状態から音を選りすぐるのではなく、曲の中のコード進行に沿いながら自分の発言をする。その時にソロを演奏している人間は周りの人間に対して自分が描きたいイメージを何らかの形で音として発信している。それをうまくキャッチするには、ソリストが描くイメージをその瞬間のメロディーとコードの整合性から瞬時に割り出して最良のクッションを提供しなければならないし、ソリストはそれが何であるのかをなるべく周りにわかりやすく示す必要がある。このコミュニケーションを僕は「音楽的読唇術」と呼んでいる。いわばインストによる即興演奏は一種のテレパシーだと思ってもいい。(追記/2022年7月2日 赤松敏弘)

洗練されたヴァイブやマリンバのインプロを考える-カウンターポイントとインターバル 2012/12/7掲載

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インプロを行うにはコード感、つまりハーモニー感覚に磨きをかけなくてはならないのですが、口で言うほど簡単ではありません。
「誰でも出来る・・・・」とか「すぐ使える・・・・」式のものは・・・・ありません。

でも、楽器を練習する環境がある人なら、楽器を介して自分の中にハーモニー感を持つ事は出来ます。
最初からその感覚が正確に宿っている人は稀で、大概の場合少なからず音感トレーニングをする必要があります。

その為には、まず、音程というものの尺度を自分で持つ事から始めるのが良いのです。
誰でもわかりやすいのが三度の音程。
コードではそれをメジャー(長三度)、マイナー(短三度)という表現で表わしていますが、まずこれが正しく聴き採れている事。
自信がなければ何度でもピアノの前に座って自分の音感を修正してください。

次にわかりやすいのが五度。
この場合は根音からの完全音程を基準に減五度、増五度の感覚を磨いてください。

最後に七度。
コードネームでは長七度の事を“Maj7”と書き、短七度の場合には何もつけずに“7”と書きます。

さて、この基本が準備万端整っている、と仮定した上で、実は六度という音程をハーモニーの中の尺度として持つと、コードネームだけでは隠れているハーモニーの中の音列を検証出来る、というお話しの途中でした。

検証としてディジー・ガレスピーの名曲“CON ALMA”を題材に様々な検証を行ってみましょう。

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コードネームにインバージョン・コードもあるので、それを補足する意味でベースラインを入れておきます。

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まずこの曲、ベースラインがずっと下行しているのに注目です。
コードの連結がこのような下行ラインを想定して作られています。

その為に、メロディーはある帯域で極力共通する音を繋いで出来ています。
これはコモントーン(common tone)を上手く繋いだ例になりますね。

メロディーは動くのが常で、それを支えるハーモニーにこのコモントーンを使って複雑なハーモニーの響きを極力スムーズに響かせるものですが、この曲はベースラインの下行設定を重要なテーマとして作られているのでメロディーの動きがセーブされコモントーンがメロディーとなっています。
ベースラインとコモントーンのコントラストがこの曲最大の特徴と言えるでしょう。

このような曲なので内声にカウンターライン(対位法)を設定しながらハーモニーの動きを明確にする方法があります。

ベースラインが下降するのですから、それに対して上昇するラインを作る事によってラインという形でハーモニー感覚を磨くのです。

基本的にはベースとして最初に設定しなかったコードトーンをスタート地点として次のコードのコードトーン、又はコードスケール上にあるアヴォイドノート以外を選択して上行ラインを作る、というとてもシンプルなものです。

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ベースラインに対しての設定ですから、ベースラインと同じ位置で動くのを基本とします。

とても明快にコードの輪郭を演出できていると思いませんか?

これをこのまま使って、インプロのメロディーとする事も可能です。

例えば、このカウンターラインに対して半音下の音をアプローチノートとして上行に勢いをつけると、こんなメロディー・ラインが作れます。

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コードの輪郭を一つ一つ丁寧に綴って行く感じが聞こえて来るでしょう。
コードネームと睨めっこしていいんだか悪いんだかわからない、アルペジオのような音列を演奏するよりもずっとロマンチックでスリリングなメロディーラインです。
この動きが面白いと思ったら、たぶんあなたにはハーモニカルな演奏を目指す資質があると思います。

ただし、このカウンターラインでは、ベースの動きと同調するのでコードが動かない部分に空白が出来てしまいます。

これをメロディーとしての独立した動きとするには、空白の(動きが停まっている)三小節目の事を考える必要があります。

そこで、本来のメロディーを当てはめて検証するのですが、さきほどのアッパーライン(カウンターラインの上行ライン)の到達点がメロディーと同じ音となってしまう点を回避する為に、三~四小節目で選択する音を変える必要がありそうです。

そこで、三小節目のメロディーがコードのトライトーンのb7thであるので、もう一方の3rdである“D”を設定してみましょう。
ちょうど直前まで上がって来たラインに対しても、一番近い(半音の位置)結び付きとなるので好都合です。

すると・・・・

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このような新しいラインが想像できます。

さて、ここでこの後の解説をよりわかりやすくする為に“異名同音”を変換しておきます。

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三小節目をBb7に揃えて変換しました。

さぁ、これで準備万端・・・・・

いや、まだ準備は全て終わっていないのです。

と、言うのも、この三小節目のコードスケールの割り出しが済んでいないからです。

何も考えなければ、ココはミクソリディアン。つまりkey of Eb のV7と解釈するでしょう。

しかし、この部分のメロディーに着目すると、Bのナチュラルがあるのですね。
これをどのように解釈するかで、この部分のサウンドはガラリと変ってきます。

さて、どのようなチョイスがあるでしょうか?

この部分の検証に、実は6度のインターバルを使うと、実に明確な選択が出来るのです。




音楽的読唇術:洗練されたヴァイブやマリンバのインプロを考える-6度の音程感覚でアナライズ 2012/12/14掲載

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藤田正嘉氏のコンサートで。2012年12月14日@下北沢・富士見丘教会

ジャズ、又はインプロを行う時、知らずの内に音程感覚の中で“軸”となっているのが、僕は場合は6度。
これは中学生になったばかりの頃に、当時遡って集めていたゲイリー・バートンのアルバムの一つ、『The Time Machine』(RCA)の中でも最も好きなトラック“Falling Grace”(comp by Steve Swallow)のゲイリー・バートンのソロを聴いていた時に気が付いた事だった。
当時はまだコードネームというものがどのような意味合いで存在しているのかも定かではなかったのだけど、聞こえて来る“衝動”(自分の胸が熱くなるような刺激)に6度下の音を重ね合わせて楽しんでいる自分があった。

もっと昔に、この“衝動”と出会った事があるな・・・・と、当時思い出してみたら、それは子供の頃(この時点でも十分子供なのだけど)に映画館で何度も観たウォールト・ディズニーの音楽。
時々チェレスタを使った音楽が挿入されていて、それらの音色(チェレスタはオンサを奏でるような楽器なのでこれは後にファンを回さずノンビブラートでヴィブラフォンを演奏する動機にもなっている)と響きに吸い寄せられるように反応していた。

で、

それらのメロディーやソロに対して6度下の音程を探る“遊び”が大好きだった。

コードネームというものの意味合いをジャズ的に拡大解釈するようになって、自分で演奏する為の曲を書いたり、演奏したいと思った曲のテーマを採譜したりする時に、どうしても「不可思議」な部分、つまりコードの特定が一筋縄では行かない時に、知らずの内にメロディーの下に6度の音程を足してメロディーに対して気持ち良くなる音程を探っている自分がいた。

後にアベイラブルノートスケールという言葉を聞くまでは、コードの特定はもちろん、6度の音程感覚による検証は調判定にまで及んでいた。

ちょっぴり話は逸れるが、6度の反転は3度。
面白い事に、ジャズミュージシャンの演奏には、この同じ音の音程を3度の尺で構築している人と、6度の尺で構築している人がいるように、僕には思えた。

あくまでも私論だけど、ソロに出て来るテンションの認識にその違いは現れていて、3度の尺を持ったプレーヤーの代表として僕はマイルス・デイビスがいた。
コードサウンドを無理矢理アウトするのではなく、3度の尺の中でギリギリまで拡大解釈する演奏を繰り広げていた。

ジャズに限らず、例えばドビュッシーは3度の尺、ラヴェルは6度の尺。

僕の中ではいろいろその尺で納まっている音楽が多い。

ともあれ、どちらが良いというのではなく、自分がどちらの“軸”を持っているのかを知っておくのは、けっして無駄ではなから時間がある時にでも、自分を分析してみるといい。

さて、6度軸の僕が今回取り上げているディジー・ガレスピーの名曲“CON ALMA”の気になっている部分をどうするか、一つ提案として例を挙げてみる事にする。

前回はこの状態まで内声の特定を行った。

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四小節目のセカンドライン(上行)がメロディーにかぶらないように三小節目で“F”を選択するのを避けて“D”を選択した。都合のよい事に、実は二小節目の“D#”からの跳躍は半音で結び付く“D”の方が近いのだ。ラインの連結では限りなく近くにある音に繋ぐのが内声を綺麗に響かせる方法でもあるからだ。

さて、これによってこのメロディーに対するカウンターライン、それと並行するセカンドラインの特定によって、より各々のコードが固有に持つ(だろう)コードスケールが炙り出された。

しかし、唯一特定出来ていたい箇所がある。

三小節目だ。

そこで、メロディーに対して6度の位置にある音を選択する事で、“軸”がブレない解釈を持つようにする。

この部分のメロディーだけではコードスケールが特定出来ない原因の一つに、メロディーに含まれる“B”(=Cb)の音がある。

この音をどのように解釈するかによって、答えは二通り。

ひとつは、メロディーから一瞬外れるものの、すぐに元の音に戻るからこの“B”(=Cb)の音は装飾音の一種である、と解釈する方法。
これであれば、この部分のコードに対する影響はほとんど無く、通常考えられる、次のメジャー・コードに対するドミナント・コードとし、V7(ミクソリディアン)とする解釈。

もう一つは、この“B”(=Cb)音をコードスケール上のある音(b9th)と設定してアナライズする解釈。

譜面で示すとこのようになる。

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もう一つ“B”(=Cb)をb9thと解釈した場合に候補にHMP5が挙がるが、これで出来るセカンドラインは妙な跳躍が含まれるのでかなり不自然だ。

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そうなると、この部分の解釈としてb9thを含むと考える場合は次のようなコンデミのラインという事になる。

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ここに出した二つの答えはどちらも有効。
ただし、演奏する時は、自分でどちらか一方に限定しなければならない。
演奏の途中や、コーラス毎に変えたのではパッキングを担当する楽器との間のコミュニケーションが悪化するばかりか、自分の“演奏軸”も優柔不断にグラグラと揺らぐだけ。

やはり、「これ」と決めたら、絶対に“軸”をブラさない事だ。

ちなみに、コンデミを挿入すると、この曲の冒頭8小節間のセカンドラインは次のような響きを放つようになる。

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※筆者注釈:コードネームG#7/C#→G#7/D#に訂正






altered chordのコードスケールからハーモニーを抽出して微妙な変化を表現する 2013/1/11掲載

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この曲のAセクションで意外と「鬼門」となっているのが通常とは少し異なる響きを持つオルタードコード(altered chord)でのソロ。

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ここでチャレンジするのは各段3小節目のコードと各段1小節目3-4拍目のコード。

まずは各段3小節目のコードから。

これは何と言う名称の付くコードスケールでしたっけ?

コードスケールのアナライズ無しには手も足も出ませんから何はともあれこの部分のコードのコードスケールを特定しましょう。

ヒントはメロディー、そして昨年暮に解説したように6度によるインターバル検証からコンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケールが該当する事が理解出来ていると思います。

しかし、アナライズ出来れば解決というわけには行きません。
あくまでもインプロを行う為の「目安」としてのコードスケールアナライズです。

特にコンデミはそのスケールの響きが独特で、そのままスケールライクなメロディーとして音階の形をそのまま取り込もうとすると、とても不自然で違和感のある響きを放ってしまいます。
つまり、メロディーとして聞こえにくい性質をもったスケールなのです。

そこで考えました。

どうすれば違和感無くコードの中で響かせられるか。

大きなヒントとして、コード表記に表わす、というやり方。

どんなハーモニーでもコードネームで表わす事が出来れば、そのコードの大元がわかります。

一段目の3小節目はBb7、二段目の3小節目はG7、と表記されていますが、これではコンデミである事が一目ではわかりませんね。
そこでどうすればコンデミだゾ! というヒントを表示できるでしょうか。

答えはフラット・ナインというテンション、つまり(b9)という表記、Bb7(b9)、G7(b9)という表記です。

我々は(b9)という表記を観た瞬間にこれがB9thの音を含むオルタード・コードですよ、という指示になります。

固有の音階を示すオルタードスケールではなく、変化した音を含むコードという意味のオルタード・コード(altered chord)。これらを混同しないように。

そこからこんな事を連想してみてください。

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コンデミのスケールの中には言葉にあるようにディミニッシュ・コードが隠されています。
名は体を表すと言うじゃありませんか。
コード表記が正しければ、大きなヒントとなるわけですね。

このディミニッシュ・コードの音程感覚は実に安定しています。
転回しても永遠に同じ。
BdimがDdimとなりFdimでもありAbdimでもある。。

ディミニッシュ以外のコードではこの安定感はあり得ません。

二段目のG7だって同じです。

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一つのテンションと三つのコードトーン。
つまりコードの根音以外を使って安定したディミニッシュ・コードが抽出されるのです。

これをメロディーに使うと、実に安定した音程を持つ事が出来るわけですね。

この性質をインプロに取り込むと、これまで不安定な音階の断片しか浮かばなかったコンデミでのソロが恐ろしいほど安定した音使いへと激変します。

すると、この繋がりや性質をもっと応用すれば、これまでの発想から大きく飛躍する事も出来そうじゃありませんか。

そう言えばコードの理論書に「ディミニッシュコードは根音の半音、又は長三度下の音を根音とするドミナントコードの代理をする・・・」な~んて書いてあったなぁ、、、。
そんな事を思い浮かべた人はいいですねぇ、せっかくだからこの際にもう一度コード理論の基礎の部分を読み直してみましょう。
あれはコードのアレンジの話しだけではなかったのです。

その辺りの秘密を少しずつ解明して行きましょう。



コードスケールからハーモニーを抽出してその気配を表現する 2013/1/18掲載

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オルタードコードとオルタードスケールはまったく意味が違うという事を整理した上で読んでください。

掲出しているディジー・ガレスピーの“CON ALMA”の冒頭に出て来るドミナントコードについて書いています。

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この部分に出て来るドミナントコードはスケールにb9thを含んでいます。

そんな、、、普通のII-Vじゃなかったの。。。!?

先週のトピックをもう一度読み返してくださいね。

ジャズの便利なところは、II-Vのような定型を用いて何でも通過出来てしまうところなんですが、まったく油断すると「どの曲もアドリブと言う割には同じ事しかやってね?」という自己嫌悪に陥ります。

もう少し丁寧に「曲」に触れるように。
たぶん、自分で曲を書き始めると、その言葉の意味がわかるでしょう。
それまでは、「もっと慎重に、丁寧にやれ!」と周りから叱咤激励され続けるしかありません(笑)。

オルタードしたドミナントコードのコードスケールの中にb9thを発見したら、迷わずディミニッシュコードを連想してそれを演奏(メロディー)に取り入れてみましょう。

少なくとも、ここで頻繁に出て来るHMP5やコンデミがコードスケールであった場合、“トンチンカン”な音型のスケールを前に、どうやってソロを取れば良いのかと途方に暮れていた人は救われるはずです。

理由はディミニッシュの持つ“安定感”、でしたね。

先週この部分のBb7とG7が、Bb7(b9)とG7(b9)という風な表記に変りコンデミである事を解明しました。

そしてそれぞれのコードに含まれるディミニッシュ・コードを提示しましたね。

これらはまったく同じスケールで出来上がっている、という事がディミニッシュのアナライズによっても明白になりましたが、ついでだから同じスケールで成り立つ残り二つのコードも書いておきましょう。

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これら、Bb7(b9)、C#7(b9)、E7(b9)、G7(b9)は同じスケール。コードの根音を見るとここにもディミニッシュ音程が見られます。
コードスケールがコンデミで、コードのルートがディミニッシュ音程のいづれかであれば、皆同じという事なのです。

しかし、全てがコンデミでない所に音楽の面白さはあります。

同じb9thを含むドミナントコードでも一小節目と五小節目に出て来るドミナントコードはどうなるか?

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ほらね、これらはHMP5になるでしょ?
つまり次に繋がるマイナーコードがIm7、それに対するV7(b9)がこれらになるわけですね。

するとこの曲は冒頭の二小節はC#マイナー、五小節目からの二小節はBbマイナー、と解釈すると演奏での事故が減るはずです。

では、同じコンデミで現れたディミニッシュ音程とHMP5で現れたディミニッシュ音程。この二つはディミニッシュ音程をそのまま演奏したのではそれらの違いを全然表現出来ていません。
どうすれば、その違いの「気配」を聴き手に感じさせられるでしょうか。


音楽的読唇術:コードスケールからハーモニーを抽出してその気配を表現する 2013/1/25掲載 




気配。

そう、何でもこの「気配」というものが漂うと、良い効果に結び付きます。
あまりにも“あからさま”だったり、“いっぱい、いっぱい”だったりすると聴き手が疲れてしまうものです。
やってる側の温度と聞いてる側の温度は、どちらかと言えば聞いてる側の温度が高くなるようにするのが演奏者の技量。
意外とクールにならないと、その場の空気を動かす事はできないものです。

ディジー・ガレスピーの名曲“CON ALMA”でどのようにすれば「コードスケールが変化した気配を演出できるか」。

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ここまでの解説で、この曲の中に出て来るドミナントコードはいろいろなスケールを固有に持っている事が判明していますが、いざ演奏でその「違い」をどのように表現するか、これが今回のテーマ。

単純に調性を頭に入れて取りかかると、二小節目に到達する前にこの曲の転調の度合いに気付くはず。

簡単にアナライズすると、1小節目のEMaj7をどのように解釈するかで頭の柔らかさがわかる。
これを固定のkeyと定めてしまうと次のG#7というコードの正体がなかなか判明しなくなってしまう。
ここはちょっと譜面を遠くから眺めるに限る。
するとこのG#7→C#m7という進行がマイナー・キーのケーデンスである事に気付くはず。
じゃ、このG#7は常識的に考えてb9thが含まれるコードスケール、常識的に考えてマイナー・ケーデンスの定番とも言えるHMP5(ハーモニックマイナースケール・パーフェクトフィフス・ビロウ)だって気付く。

じゃ、最初のEMaj7はメジャー・キーのIMaj7ではなく、マイナー・キーのbIIIMaj7と解釈すれば頭の中から一つ平行調への転調という観念をパスできる。
すると1小節目から2小節目に登場する4つのコードは皆C#マイナーに属するコードと解釈出来る。

すなわち、

bIIIMaj7/C#m - V7(b9)/C#m - Im7/C#m - bVII7/C#m-

譜面にはG#7のところにb9thという注釈が無いので初見でマイナー・キーという自覚が得にくい。
アナライズすれば分かる事なのだけど、もしも自分で譜面を書く事があれば、こういう部分には(b9)という注釈を必ず入れよう。ソロの時に困らないからね。

さて、3小節目でガラリと転調する。

ここも少し遠くから譜面を見れば、次の小節のEbMaj7がキーワードになる。

すなわちBb7→EbMaj7はEbメジャーのV7→I。
これで完璧と思う事なかれ。

メロディーの音に注目。

Bb7のところにBの音がある。
これすなわちb9th。

ここでもb9thを含むオルタード・コードが潜んでいる事に気付かないと大怪我をする。

ここはどのように考える?

調性的にはEbでOK。

メジャー・キーに向かう時のオルタード・コードは基本的にはコンビネーション・オブ・ディミニッシュ。
そのキーワードは13thというテンションにある。
これがあると「マイナーではないゾ」という主張。
ただし、劇的な変化の場合はアレンジの意味でその限りでは無いから安心してはいけないのだけど、この場合はまず曲に調号が付いていない。
さらに次に進むEbのキーには“G”という音は存在するが“Gb”という音は存在しない。
まぁ、百歩譲って考えても、ここに“Gb=b13th”を入れる根拠は乏しい。
したがってこの部分Bb7のスケールはコンデミ。

この場合も、もしも自分で譜面を書く事があるのなら(b9)という注釈を入れるべきだ。
ソロの時に大怪我をしないで済む。

さて、ここに出たオルタード・コードのHMP5とコンデミ。
ソロを演奏する時は基軸にb9thから始まるディミニッシュ音程を置くと良いと先週説明した。

つまり、G#7(b9)だとAdim、Bb7(b9)だとBdimだ。

まずはこれを取り込んだアルペジオを演奏してどんなサウンドになるか確認しておきましょう。

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下のアンダーラインの部分がそれぞれのディミニッシュ・アルペジオになっている。

こう見るとオルタード・コードはディミニッシュに変換さえすればけっこう簡単に攻略出来そうなんだけど、このままではどちらもただディミニッシュが聞こえるだけでHMP5なのかコンデミなのか明確ではない。

ある程度はそれで一時凌ぎ出来ても、「毎回オルタード・コードになるとディミニッシュしか聞こえないねぇ」と言われたらお仕舞い。

そうなる前に、もうちょっとそれぞれのコードスケールの個性を取り込んでおきましょう。

HMP5とコンデミのコードスケール上の違い。これがメロディー(この場合はアルペジオ)に含まれるといいわけです。

違いを言葉で述べよ!

root-b9th-3rd-11th-5th-b13th-b7th

root-b9th-#9th-3rd-#11th-5th-13th-b7th

並べるとわかるよね、違い。

そこで、ここではどちらもディミニッシュ音程を作る為にb9thを使っているのでそれ以外の相違点をメロディーに一つ加えるだけで、全然異なるスケールを持つコードである事が表現出来るわけだ。

でもね、11thはアヴォイドノートだからHMP5では使えない。
#11thは使えるけどコンデミにしか無い。

まぁ、コンデミで使うのは自由だけど「相違点」を出すなら両方とも使える音程がいい。

すると、HMP5ではb13thだけど、コンデミでは13thになる違いがベスト。

さっきのアルペジオに導入して効果を見ましょう。

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ディミニッシュ音程は聞こえるけど、二つとも全然異なるサウンドの「気配」が演出されたと思う。

付け加えるなら、コンデミの#9thも比較対象の好例になるでしょう。
サウンド的にはブルーノートと似た響きが得られるので面白味も増す。

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ただし、#9thを使い過ぎると「くどくなる」のでここは一度だけあっさりと使うのがカッコいいよ。
何事もやり過ぎは禁物、ですね。



音楽的読唇術:洗練されたヴァイブやマリンバのインプロを考える/コードスケールの気配とは移動ド感覚の事 2013/2/1掲載

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ディジー・ガレスピーの名曲“CON ALMA”でインプロの解説中。

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先週はb9thをコードスケールに含むオルタード・コードでディミニッシュの音程を骨格としたアルペジオを造りそれぞれのオルタード・コードに該当するコードスケールを割り出して、その特徴あるコードスケールをどの音で主張するかにといて述べました。

  • つまり、オルタード・コードの内、b9thをコードスケールに含む時には何でもディミニッシュ音程を見出せば安心して通過(言い換えれば無難な演奏は)出来るが、コードが固有に持つ音でコードスケールの特徴を表明確な『気配』の表現に繋がらないという事でした。

今回は次のステップに進む前の最終チェックとして、アドリブでメロディーを作る時のガイドとしてその『気配』が何であるのかをチェックしておきましょう。

■『気配』はあらゆる方法でキャッチせよ

ここまでの説明で『気配』という言葉の意味を何となく描けている人はいるでしょう。
しかし、まだ「コレ」という確証には至っていないかもしれません。

もしも確証が持てるのであれば、その『気配』が演奏者全員で一致しなければならないからです。
ならば、それを絶対的な確証へと持ちこめる手立てを見つけなければ。

そこで、次のようなラインを提示します。

まず、このライン(メロディーとまでは呼べないがコードサウンドは十分表現しているもの)を弾いて、何をどのように考えてこのラインが作られているのかを解明してください。

譜例に続いて答えを書いていますが、なるべく譜例から分析して、後で答え合わせしてください。

■チェックポイント1
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・テーマのメロディーの内、それぞれのコードの最初の音をスタート音とした
・それぞれのスタート音の間はコードスケール(アヴォイドノートも含む)で結んだ

この曲のテーマのメロディーを軸に、それぞれのコードが固有に持つスケールの形(エッジ)を一定の音域内でライン的に表したもので、隣り合ったコードのコードスケールの変化が音感的(譜面にすると視覚的)に比較出来る。
このような変化が音楽の動機へと繋がるので個々のコードスケールの違いを根音以外のポジョンから身につける練習になる。

さて、この曲冒頭は8小節ですが、ココには6小節目までしか載せていません。
ここまでの仕組みが理解出来ているのであれば、残り2小節は完璧に「一致する」答えが弾けなければなりません。

では、残り2小節(|G7(b9)|CMaj7||)をどう弾くか、来週答え合わせしてみましょう。→ ■宿題1

次のチェックポイントです。

■チェックポイント2
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ある一定の方向にラインを想定して、隣り合うコードのコードスケールをなるべく近い位置で乗り換えながらメロディーを展開して行く練習。コードスケールさえ理解出来ればとても簡単なメロディー創作トレーニングになる。

同じく残り2小節の中をどのようなメロディーで演奏するべきか答えて下さい。→ ■宿題2

つまり、これは「気配」を予測する全てのヒントは移動ドにあり、という事なのです。

・音感(聴こえた音を単旋律、和音として捉える力)
・知識(聴こえた音・和音がどのハーモニーと一致するかを分析する力)
・技術(聴こえた音・和音に対して反応する音を瞬時に演奏する力)

ジャズで言う創造の三原則は、大きな部分を実は“移動ド”が占めているのが見えて来たでしょうか。




音楽的読唇術:洗練されたヴァイブやマリンバのインプロを考える/気配を移動ド感覚で読み取る 2013/2/8掲載

「その先」を読みとる耳と音感を調整する時間。
楽器を弾くだけではダメで、つねに自分が何を根拠に音を発しているのかをチェックしながら上達しなければならない。そのためには、コードスケールというヒントを上手に乗りこなす術が必要になる。
その一番の元が、移動ド感なんだ。

ディジー・ガレスピーの名曲“CON ALMA”の冒頭の部分でチェック中。

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先週は「その先・・・・」を予測する宿題を出した。
それまでの動きから読みとれば答えはそんなに難しくはないはず。

では正解を。

■チャックポイント1
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この後の二小節(|G7(b9)|CMaj7|)にどんなメロディーラインを弾くか。

答えはこうだ

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■チェックポイント2
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この後の二小節(|G7(b9)|CMaj7|)にどんなメロディーラインを弾くか。

答えはこうだ。

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「な~んだ」って思った?
「バッチリ」だった?

つまりは“移調”感覚。
すなわち“移動ド”感覚だ。

前半の四小節のメロディーラインを後半四小節に移調するわけ。

何がわからないとコレが出来ない?

そう、コードの連結が何調を示しているかがわからないと大変だ。
このやり方は単旋律の移調という単純な事を訓練するのではなく、コード進行そのものをアナライズしてメロディー音の位置をチェックしながら演奏する感覚の訓練。

■アナライズ

最初のコードEMaj7をそのままメジャー・キーのトニックと解釈すると、次のコードから混乱が始まる。
冷静にコードの流れを読めば、ケーデンスの形がG#7(b9)-C#m7のところにあるのに気付くはずだ。

最初の4つのコードはC#マイナーのキーのコード達。

EMaj7-G#7(b9)-C#m7-B7 → bIIIMaj7-V7(b9)-Im7-bVII7。

続くBb7(b9)-EbMaj7は EbメジャーのV7(b9)-IMaj7。

二段目最初のコードへの“接続詞”Ebm7-Ab7はDbメジャーのIIm7-V7。

二段目最初の4つのコードはBbマイナーのキーのコード達。

DbMaj7-F7(b9)-Bbm7-Ab7 → bIIIMaj7-V7(b9)-Im7-bVII7。

続くG7(b9)-CMaj7はCメジャーのV7(b9)-IMaj7。

単旋律の移調奏と移動ド感覚の違いがおわかりかと思う。


では、この譜例のチェックポイント2を題材として次のようなバリエーションを創造してみましょう。

■課題:次のメロディーを指示に従って変化させなさい。
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・オルタードコードの箇所のメロディーを変更する
・オルタードコードをディミニッシュ音程+キャラクターノートの形で表わす
・前後のメロディーに近い位置で接続させる

まず最初にオルタードコードの部分( □ )をチェック。
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オルタードコードのところをディミニッシュ音程とキャラクターノートで創造する。
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さあ、□の部分にどんなメロディーラインを当てはめられるかな?




音楽的読唇術:先週の回答 2013/2/15掲載

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ひょっこりと市川秀男(p)さんのライブに訪れた故・真島俊夫(arr)さん(右)と。市川さんとはこの世界で随分古くからのお知り合いだったそうです。

ジャズのインプロヴィゼーションの良いところは、インプロヴィゼーションに至る過程を学ぶうちに、編曲も作曲も出来てしまう、という事。
すなわち「音に対する創造と実践」を非常にコンパクトなエクササイズで習得しているようなもの。
そのエリアはジャズに留まらず、ポップスからクラシックにまで及ぶ。

では、ジャズのインプロヴィゼーションの欠点とは何だろう?
これを読んで“明日”に備えている人には十分理解しておいてほしい事なんだけど、音楽の仕組み以外の全てだ、と言ったら語弊があるか。でも、音の表現力に於いては、まだまだクラシックの比では無いところが残っている。

残っている?

ヘンな書き方だねぇ。。。
いや、でも、残っているんですよ。

例えばクラシックの演奏家がどんなに上手に難しいパッセージを弾こうが、素晴らしく美しい音色を奏でようが、聴き手を“圧倒する事こそあれ感動というレベルには達しない”。
これらは表面上を整える練習に明け暮れた結果でしかない。
つまり、間違いの無い完璧な演奏に自己満足を覚えてしまうとこうなってしまう。
それは「採点至上主義」の悲劇。
審査員や教官から審査される事に目がくらんだ結果なのだ。
自らを自らで評価出来ない悲しさ。

厳しいのだ。

その音の背景にある「演奏者」の持つもの(それは楽曲に触れている最中に見たものとも言う)が音符という制約だらけの上に浮かび上がらないと対価を払う価値のない演奏になってしまう。

生半可な音では感動はない世界だ。
そこに書かれた作曲者が見たモノをどれだけ自分が再現出来るか、或いは一体となって表現出来るか、に全てがあるのがクラシックだ。

だってクラシックだろ?
僕らが見た事も聴いた事もない世界(時代)の音に触れさせてくれなきゃクラシックでも何でも無い。
その道先案内人こそがクラシックの演奏家であるべきだ。

最近、ある番組で万人にピアニストとして認められた演奏者に作曲の手ほどきを下すというものを見た。
演奏の次は作曲でしょう、というビジネス感覚だ。

しかし、そうは簡単に行かない。
そこに演奏者が何を見て演奏していたのかが露見して「やはり、ね」とわかってしまったのだ。

厳しい世界だ。
全てがバレてしまう。

では、ジャズのインプロヴィゼーションの場合はどうだろう?

そこまでハードルを上げる事ぁあるまい、などと甘やかす連中もいる。
客が知ってる曲をチョロチョロ~とやって拍手が来ればいいんだよ、と寂しい事を言う人もいる。

ハードルを上げず、客の顔色を気にしながら演奏するのなら、ジャムセッションだけで十分。
「知らなかった世界」「知らない世界」へと導くものが音楽ではなかったか。

ジャズのインプロヴィゼーションの最大の欠点はそこにある。
つまり明確なジャッジメントの基準がないのだ。

インプロヴィゼーションという言葉が即興演奏という言葉と結びつくなら、少なくとも「即興」的に何かが起こって「知らなかった世界」の片鱗くらい感じさせてほしい。

これだけマスのサイズが小さくなった時代なら、「ここにしかない」ジャズ、「ここでしか聴けない」ソロ、を目標とする事が大前提で良いのではないかと思う。

その為には、ジャズのインプロヴィゼーションを創造・創作の世界と結びつけられるのが理想だろう。

ならば、ジャズの表現に欠けているクラシック的な表現方法をも取り入れながら、開拓して行くのがベストだと思う。

ただ唯一ジャズのインプロヴィゼーションで救われるのは、音楽が「今」である事だ。
僕らはクラシックの演奏家が100年も200年も音楽の歴史を探究する時間を、今、この時代に何が起こっているのかを敏感に感じ取っているだけで済むのだ。

目指せ!唯一無二!!


先週の課題の回答から。

要するに練習過程で「ひとつの形」が見えたら、遡って前に吸収した形を導入する事でさらに音に対して勇気を持つ、という事です。

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b9thが含まれるオルタードコードのところをパターンから外してブランク(□のところ)を作る。

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オルタードコードがどのようなコードスケールであるのかを分析した後にディミニッシュ音程とキャラクター的なテンションによって配列し、前後のメロディー音に近い位置で連結する。

すると・・・・

回答!

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ダイアトニックなインプロヴィゼーションのトレーニングはこのような形で様々に展開して行くと良いのだけど、いつもその展開ばかりでは「また同じ事やってる」「どの曲のソロも似たり寄ったりだねぇ。。。」と。
それは承知の上でこれまで解説しているのは、あくまでも基礎の段階でハーモニー感覚を養う事が何よりも先決である為です。

前にも触れましたが、ジャズのインプロヴィゼーションの最大の欠点は明確なジャッジメントの基準がないところにあるのです。
最初から的確な指導者に巡り会えた場合はラッキーで、大半の場合は暗中模索でビギナーの時期を過ごします。
その過程で身に着けたものの中には、重要な事もあれば、大きな誤解、時には間違いや嘘まで背負いこんでいます。
やたらと用語を用いた解説をそのまま引用してわかったフリをしているケースすらあります。
コードネームやコードシンボルの意味すら理解していないものまで・・・・

それをどのような基準で振るい分けて行けば良いのかの指針を示しているのです。

要は「根拠」に尽きます。

音楽用語には必ず意味があるわけですから、その意味=根拠さえ理解しているなら迷う事などないわけですね。

(おしまい)