Archives-11【人気シリーズ】盤面と打点の研究

【人気シリーズ】盤面と打点の研究 2013/3/8掲載

2013年3月8日、金曜ブログ「祝!三百回/できるならアジャスター付きが好ましい・・奏法編:打点の研究」のアーカイブです。記事の文面のデータは当時のものです。現在では改良等進化が起きている場合もあります。

遂に達成!金曜ブログ三百回

middle_1537570255.jpg

本日は三百回記念として『できるならアジャスター付きが好ましい・・・・奏法編:打点の研究』と言うお話し。

来ましたねぇ、三百回。
塵(ちり)も積もれば山となる・・・・ですか。

第一回目の金曜ブログが2006年3月24日ですから7年。(当時)
曜日別カテゴリーと言うのが功を奏して順調に毎回話題には事欠きませんでした。
もしもこれが毎日、日々の事を綴るとなると・・・・・たぶん続かなかったのではないかと。
取りあえず、最初から回数をカウントしていたのは、内容的に読み切りではない金曜ブログだけですが、ほかの曜日も順調に三百越えしています。

さて、本日は久しぶりに奏法編。

ちょうどいろいろとお問い合わせも重なっているので、三百回記念として情報を放出しますね。

楽器の購入のお問い合わせと連動しますが、最近は各メーカーとも鍵盤の高さを調節出来るアジャスター付きの楽器を生産していますが、その機能は機種の選択肢に入れるべきか否か、という件。

僕自身の経験から言うと「入れるべき」です。
それが今日の本題と連動します。

“クラシック弾き”というのがあります。

どういう状態かと言えば、全ての音が等しい大きさで奏でられている事。

え~っ? それって間違いなの?

びっくりする人もいるでしょうね。
大丈夫、これは間違いではありません。

古典的なクラシック音楽の“歌い方”の特徴は、比較的長い旋律的な動きを繋いで(小節も超えて)一つの歌にする用法。ですからその途中の音は、大きなダイナミクスのカーブを描くように滑らかに繋がっていなければなりません。
もしも、その状態を日本語で表わすとすれば・・・

タタタタタタタタタタタタタタタタ・・・・
これにスラーをかけた状態

ジャズやポピュラーでの“歌い方”の特徴は、比較的短い区切りの抑揚の連続によって旋律の流れやリズムを感じさせる用法。ですからその途中の音は、いろんなニアンス(ある意味では不揃いな音の連結)を持って成立しています。
もしも、その状態を日本語で表わすとすれば・・・・

タントンタカトコタカトンタランタ・・・・・
一つ一つの発音が異なる音程や強弱と解釈してください

ヴィブラフォンのレッスンを始めて最初の喚問がこのニアンスをどのように表現するか、なのです。

おかしいですね、それまでにもしもクラシック的なトレーニングを受けていたとしたら、綺麗に全ての音を均一に鳴らす練習に明け暮れているはず。
それをデコボコにしろ、と言われているみたい・・・・

でも誤解しないように、あくまでも自分の意図を持ってデコボコにしましょう、と言う事は、そのデコボコの一つ一つを自分でコントロールする、という事なのです。
ただ叩いたらデコボコしてるのは問題外。
あくまでも自分が意図した通りのデコボコになるような訓練なのです。

例えば・・・

タッタタタタッタ

という音符があるなら、

タンタカタカンタ

というニアンスで演奏してみると、抑揚によってリズムは表現出来るという事がおわかりになるでしょう。
これを楽器でやるわけです。

その時に、マレットの使い方で検討しなければならない事があります。
単に叩くのではなく、どうすれば一つ一つの音にニアンスを付けられるかを考えながら叩く。

それともっともダイレクトに結び付くのが“打点”の考察。

自分が演奏する時のマレットが描く放物線と、マレットヘッドがどのような角度で鍵盤にヒットしているかを観察してみてください。

ここでは代表的な二種類のパターンを取り上げます。

[A]のパターン・左手
middle_1362695922.jpgmiddle_1362695961.jpgmiddle_1362696014.jpgmiddle_1362696057.jpg

[B]のパターン・左手
middle_1362696187.jpgmiddle_1362696217.jpgmiddle_1362696245.jpgmiddle_1362696273.jpg

[A]のパターンはマレット・ヘッドの真ん中で鍵盤をヒットし、なおかつハンドル(マレットの持つ部分)が鍵盤に対してほぼ水平。
[B]のパターンはマレット・ヘッドの真ん中から上で鍵盤をヒットし、ハンドルは鍵盤とは水平にならない。

実は僕は昔は[A]のパターンでした。
しかしいろいろと研究する内に[B]のパターンに変りました。

理由は一つ。

[A]のパターンだと、音の強弱意外の変化が付けにくく、[B]のパターンだとそれが自在にコントロールできるからです。


右手も検証してみましょう

[A]のパターン・右手
middle_1362696660.jpgmiddle_1362696693.jpgmiddle_1362696719.jpg


[B]のパターン・右手
middle_1362696776.jpgmiddle_1362696809.jpgmiddle_1362696836.jpg


二つのマレット・ヘッドの角度はこんなに違います。

[A]のパターン
middle_1362696913.jpg

[B]のパターン
middle_1362696963.jpg

自分がどちらのタイプなのかは、使い込んだマレットを見てもわかります。

middle_1362697121.jpg
左:[A]タイプのレッスン生のマレット 右:[B]タイプの僕のマレット

[A]のパターンのマレットの使い方はボリュームのある音が必要な時には有利ですが、ヴィブラフォンで頻繁に要求される消音奏法のマレット・ダンプニングやミュートには向きません。なぜなら鍵盤に触れた瞬間にマレットが弾き飛ばされるからです。無理矢理鍵盤を押さえつけて消音しようとするとマレットノイズが発生します。

[B]パターンにするとボリュームのある音は[A]パターンに一歩譲りますが、それ以外の様々な音が出ます。また消音奏法では、マレットの力が上手く分散されるためにマレットダンプニングやミュートにおいてもノイズが発生しません。また、これは経験上の事ですが、基音側と派生音側の鍵盤を片手で行き来するのが非常に楽です。

総合的に判断すると、基本を[B]のパターンとして、必要がある時のみ[A]のパターンを使う、というのがベストになるでしょう。
実際に試すとよくわかると思います。

また、ヴィブラフォンやジャズの4本マレット演奏では俗に言うバートン・グリップ ( 本人はマイ・グリップとしか呼んだ事が無いと・・・/笑 ) が主流になるのも、実はこのマレット・ヘッドのコントロールがやりやすい為です。
マレットをグッと掴んで手首をホールド ( 固く ) してしまうタイプのグリップ ( 例えばトラディショナル・グリップ ) ではこのコントロールが難しいのです。
マレット・ヘッドのコントロールは手首のスナッピングとマレットを振り下ろす角度とのバランスで幾重にも音色を調整しているのです。

さて、それと「アジャスター」の件がどうリンクするのか?

実は、[A]のパターンは比較的背の低い人、[B]のパターンは比較的背の高い人の自然なポジションなのです。

従来のヴィブラフォンでは、鍵盤上面までの高さが約87cm。
立奏楽器の場合、平均的に腕を曲げて楽に振り下ろせる状態が身長の約半分の位置と言われますから、その辺りに鍵盤上面があると理想です。
個人差はありますが、ウエストよりも上に鍵盤上面がくると、ちょっと高く感じるのではないかと思います。

例えば、87cmの楽器だと身長が約174cm、靴底の厚さをそこから差し引いた人にピッタリという事になりますね。

日本人の平均身長(男子成人)が167cm~171cmの付近ですから87cm(174cm)はどう見ても欧米向けのセッティングになっているわけです。

ある程度は靴でカバー出来たとしても限界はありますね。
かつては厚底の練習靴を使った経験もありますが、極端に高さを変えるのは身体のバランスが取りにくくなるのでお勧めしません。ペダル側の足はほぼ固定されて片方の足でバランスを取る瞬間もあるので足首を捻挫する危険性があります。

それなら楽器の高さを調節出来れば、身体のバランスを崩さずに最もコントロールしやすい打点を得る事が出来るわけです。

そこで重宝するのがアジャスター機能という事なのです。



アジャスター機能付きタイプのススメ

middle_1362698605.jpg
左:アジャスター機能付きM55GJ 右:ノーマルタイプM55

この鍵盤の高さと身長の関係というのは微妙で、鍵盤が顔に近いのが良いか悪いかは個人の好みと環境によります。

目から鍵盤が近いほうがミストーンが少なく、遠いと多くなる傾向があります。物理的にそうですよね。

反面、鍵盤が近いとワイドレンジな演奏が大変なのに対して遠いと楽です。人間は振り上げるよりも振り下ろすほうが楽に出来ているので鍵盤は低い方が楽に演奏出来ます。

それらの中のメリット、デメリットを克服する一つの有効な策としてアジャスターが果たす効果はとても大きいわけです。

middle_1362699207.jpg
ノーマル・タイプでも高さを調整する事は可能で、このノーマルなM55はキャスターを小径なものに交換しているので通常よりも5mmほど低くなって86.5cm。

たった5mmと言う事なかれ、その違いは絶大なのです。

middle_1362699361.jpg
こちらはリビングにある別のM55(ノーマル)。

middle_1362699416.jpg
キャスターはオリジナルのもので鍵盤上面までの高さは87cm

middle_1362699599.jpg
2011年から導入したアジャスター機能付きM55GJ。鍵盤上面までの高さは現在82.5cm

一番低い状態にセッティングして82.5cm。これだと身長165cm、さらに靴底の厚さが増せばそこからその厚さの分だけ引いた身長の人が今までよりも楽に弾けるわけです。

もちろんこれまで慣れていた高さで演奏するのも結構、あくまでも個人の好みに合わせてセッティングすれば良いわけですね。

そして、高さよりも一番大きな影響を受けるのが「打点」という事になります。

これから楽器を購入される方、検討中の方、マレットの軌道の事も含めて考えると、アジャスター機能付きを選択肢に入れておくと良いのではないでしょうか。

(おしまい)