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【いい音を求めて】その1. 手順の開拓

楽器によって音色に違いはあれど、“いい音”のするプレーヤーの演奏は聞いていて疲れません。
どんなにアヴァンギャルドな事が展開されていても“いい音”のするプレーヤーの演奏にはその音楽そのものに興味がある無しに関わらず、耳が吸い寄せられます。どんなに大音量であっても“いい音”のするプレーヤーの演奏ならずっと聞き続けていられるものです。逆に、どんなに綺麗な音楽を練り上げて構築していても“汚い音”のプレーヤーの演奏は早々に退席します。どんなに神経質な音を出しているかに見えても“貧相な音”のプレーヤーの演奏は無神経に聞こえてしまいます。
つまり、人々の心を掴んで振り向かせるには“いい音”であるべきなのですね。

もちろん“いい音”の価値観は人によって様々。ガーガーと騒音を立てているだけに聞こえる電車や車、飛行機の走行音も、人によっては心地よい“いい音”(実は僕もそういう音は大好き)になります。ただ、ここで述べるのはあくまでも楽器というものから発する“いい音”のお話しに限定。

この“いい音”には大きく二つあって、一つはそのままその人が楽器から発音している音色のこと。もう一つの“いい音”はその人の楽器で奏でている音楽の持つニアンスのこと。

楽器から“いい音”を出しているプレーヤーでも、本人がそれに気付いていないケースは意外と多く、そのままだと宝の持ち腐れで残念なことになってしまうのを時々見掛けます。なぜなら周りの同業者よりも“いい音”が出ているから皆と一緒ではないわけで、誰かがそれを“いい音”と教えてくれなければ、自分が間違っているような錯覚に陥って不安で押し潰されそうになるのです。そうなってしまう一番大きな要因は本人が持つ見当はずれの「憧れ」かもしれません。向き不向きという事ではなく、“いい音”を活かし切るシーンに恵まれないと、本人はどんどん不安になって“いい音”を見失ってしまうのですね。方向違いの「憧れ」を抱いてしまうと、本来天から与えられた“いい音”を俗っぽく潰してしまい、その楽器にとって大きな損失を招く場合もあります。“いい音”を維持するのも大変な事です。

かたやいくら“いい音”が集められて書かれた曲であっても、“いい音”を奏でるプレーヤーがいないと役不足、聞いていて辛くなります。薄っぺらい音や汚い音でいくら綴られても消化不良、一音の“いい音”が登場するだけで何もしなくても“いい音”の音楽になります。

たまたま僕はそういう事には割と早く気付くようなので、いいタイミングで出会ったり、何かヒントをあげたりするシーンがあるようです。

さて、ここまでの“いい音”の印象はただ単に綺麗な音色という事に受取られがちですが、綺麗という感覚とは少し違うかもしれません。
どんな楽器であっても、その人の手に掛かると「その人の音」になるもの。
最高級ブランドの最高峰の楽器を演奏しても、普及品のノーマルな楽器を演奏しても、その人が演奏すると“いい音”がする。
そうなんです、「その人の音」というものがその楽器にどれだけ“いい音”を齎しているか、という事なのです。

音は消える時こそ美しさと表情を残す・・・・わが家の家訓です。

上手なプレーヤーは手数もそれなりに多いし、器用さもあって超絶的な技巧も備わっているものですが、その上を行く“いい音”を奏でるプレーヤーは音の消え方が絶妙。立ち上がりの事は万人のプレーヤーが気にするところですが、消え方まで配慮しているのは数えるほどしかいないような気がします。
そういうプレーヤーが演奏を始めると、皆、振り向くのです。心の中に「っえ?」ていう音が聞こえて来て。

“いい音”の為なら何でもします。
単純な事ですが、そういう姿勢を貫き通した所に“いい音”は存在しているのです。
決して他人から何かを伝授されてそうなっているのではなく、誰も頼みもしないのに勝手に何でもしているのですね。
もちろん先に出た「憧れ」から多くのヒントを得られるでしょう。
それが無ければ進化する動機が生まれないかもしれません。刺激というか。

“いい音”のヒントは自分が奏でる楽器に留まりません。むしろ自分の楽器に無いものを持つ楽器から多くの“いい音”のヒントは生まれて来るでしょう。
そして、“いい音”を生かせる音楽は自分が奏でる楽器のエリアの外に散らばっているでしょう。

もしも、コンテンポラリーな音楽に“いい音”の活路を見出したとしたら、コンテンポラリーをそのままやるのはそれほど難しい事ではありません。すぐに「それなりの雰囲気」を曲で得られるからです。
そこに全てのものから等しい位置にいる「自分の音」を持ち込む事が出来るかどうか。これが欲しい。
逆に、ハードバップのオーソドックスな音楽にチャレンジしようとすれば、バップの仕組みに従ったフレーズやリックを奏でるのは難しい事ではありません。すぐに「それなりの雰囲気」がしてくるでしょう。
ただ、21世紀の今、この瞬間を表すに適した“いい音”がそれらの中にあるかどうかは疑問でしょう。
即興演奏という事から大きくかけ離れた音を出すよりも、「自分の音」で反応する事が大切かもしれません。
そこにどんな「憧れ」というものが存在するのかは、人それぞれ。
自分の出せる最良の“いい音”で、どんな音楽とも交われるのを理想、目標としたいですね。

音楽の流儀は自己判断で

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流儀。技能・芸術などでのその人(派)独得のやり方やしきたり。物事のやり方。人間の営みの中で流儀の無い物はないと言えるでしょう。階段を上がる時に右足からステップに足を乗せるか、左足から乗せるか・・・なんて事も、これが習慣になると立派な流儀になるかもしれません。まぁ、一代限りで続かない事じゃそうならないかもしれませんが、その場面に「意識して」というものがあれば流儀と呼べるでしょう。そう、意識して、と言うのが流儀の初期の特徴かもしれませんね。

音楽でも様々な流儀があります。僕はそれを人に強要する必要はない程度のどうでも良い事と感じますが、中には流儀によって違う流儀と反目するケースもあります。まぁ、多分に自分流の押しつけが殆どですが、伝授される側にとっては問題解決のヒントになるものもあります。これが派閥の元ですね。でもネット社会になるとそういう流儀も、まったく自分で経験もないのに軽々しく引用して如何にも物知りを装う道具にされている場合もあるので要注意です。単純な所ではそれが外見に向けられて発せられる場合など。僕らのマレット・キーボード界でも単純に楽器を叩くマレットの数で云々されるケースがあります。2本だからどうのこうの、4本だからどうのこうの・・・どうでもいい事です。目から得た情報は耳を塞ぎます。耳からの情報は目を塞ぎません。音楽は耳で判断しましょう。

さて、もっと演奏に直結したまともな流儀のお話し。
ピアノを弾く時に、指を立てて弾く人と寝かせて弾く人がいるのを御存知でしょう。元・ピアノ科専攻(と言っても高校1年の1セメの話しですが)の乏しい経験(その後副科としてはベテラン!)では、ベートーヴェンを弾く時は指を立てて、リストを弾く時は指を寝かせて・・・という風に使い分けていましたが、これは立派な流儀です。全体的にややゴツゴツしたダイナミクスを求められるベートーヴェンの音楽では、鋭いタッチと鍵盤を深い位置まで押さえる感触が演奏のイマジネーションに似合っていると思ったし、リストやフランス近代の作品を弾く時は滑らかな音の連鎖と素早く弾くパッセージが多いのでこれもその音楽のイマジネーションと似合っていると感じました。

ただ、自分がもっと子供の頃は古い流儀だったのか、ピアノは指を立てて弾くもので、指を寝かせて弾くのはオルガンだ、とされた記憶もあります。たぶん、まだピアノというものが十分に普及されていない時代に、数少ない「流儀論者」が全国に向けて「オレ流」を言い放ったのが地方の田舎町にまで届いていたのでしょうね。今ではそんな事を言う人はいません。

このような経験があって、流儀というものは本当に音楽にとって必要な物かどうかを自分で見極めてから受け入れる必要があるな、と思うようになりました。

打楽器の世界で勉強の過程ではいろいろありました。いや、似た事は打楽器の世界以外でもあるでしょう。
例えば、スネア・ドラムのスティックの持ち方(グリップ)。僕はヴァイブは自己流で13歳から始めたのでグリップは最初からバートン・グリップでした。当時のゲイリー・バートンのアルバムジャケットの写真を見て“持ち方”を覚えるしか無かったからですが、高校でちゃんと専攻する事になって打楽器の基礎を教わるのが日課となった時に、スネアのグリップは俗に言う“芸大スタイル”の左手を返す持ち方(一般的にトラディショナルと呼ばれるグリップ)で習いました。後にバートン・グリップにはこれがとても有利に働くのを感じて、それは良かったのですが、音大に進む時にA音大に入るならその“持ち方”ではダメ、B音大ならたぶん大丈夫、みたいな事を言われたのです。

そのどちらも別にスネア・ドラムを専攻するわけではないので僕にとってはどうでもいい事なんですが、どうやら学校にとっては「どうでもいいことではない」らしいのですね。この時点で、もう本気でクラシックとはおさらばする気になりましたが、もしも自分がクラシックを生涯の生業として考えていたら、どんなにショックだった事でしょうね。

マレット・キーボードの世界でもそれはいろいろあります。
4本のマレットを持つ時に片手の二本のマレットを手の中でどのように組み合わせるか。僕は最初からバートン・グリップなので左右の手の外側のマレットを上に重ねますが、トラディショナル・グリップは反対に左右の手の内側のマレットを上に重ねます。

他の楽器からすれば、どうでもいい事ですが、マレット奏者にはかなり大きな流儀のようです。
ヴィブラフォンを習う弟子達には「持ち方はどちらでもいい。ただし、もしも、やりにくいと感じる事が増えて来たら、僕の持ち方に替えてみると問題の解決に繋がるかもしれない」と告げています。
僕もトラディショナル・グリッブに挑戦した事がありましたが、いろんな理由から採用しませんでした。そこには一つだけ大きな理由、クラシックとジャズの用法の違いが明確に存在していました。もちろんこれは僕にとっての事かもしれませんが、ジャズを習う事によってトラディショナルから変更する人が多いのも事実です。

つまり、指導者から言われるがままに流儀に沿って何となくそうしていた事が、ある時点から沿えなくなる、ということ。沿えなくなる理由を克服出来れば、それは最初からの流儀が理に適っていた証拠であり、克服出来ないとなると、流儀の範疇を超えた時点に自分がいる事を自覚したほうがいい、という事にもなります。
ともあれ、演奏ひとつにも、様々な流儀が存在し、それを日々、自らで更新して行く事で演奏技術と表現方法は広がりを持つわけです。
流儀に捕われて足踏みしていたら、進化のチャンスを逃す場合もあるかもしれません。





「手順」と「意識」の連動 = 音の流儀 2018/5/18掲載

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「手順」と「意識」の連動についてチャーリー・パーカーの「Donna Lee」の5小節目からのメロディーで学んでみましょう。この曲はテーマを弾くだけでも様々な事を学習できるのです。

あなたが2本のマレットを持ってヴィブラフォンの前に立っているとしても、4本のマレットを持ってヴィブラフォンの前に立っているとしても、これから説明する事を一度試してみて欲しいのですね。

このメロディー、まぁ、テンポは200くらいからを想定しますが、どんな手順で演奏しますか?

まず自分でやってみてください。

そして、ミストーンも無く弾けるようになったら、次の手順で試してみてください。
最初からこちらで演奏しないようにね! (笑)

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このメロディーを眺めた時に、音の高低が多いのが譜面からもわかります。
左右の腕を使って演奏する時に、そのターンの箇所にどのような手順を持って来るのかがマレット・キーボーダーの宿命であり、センスだと思うのです。
この場合はターン、又はターンに掛かる箇所はダブルストローク(二連打)を使っています。
シングルストローク(左右交互)で演奏した時と、ターンをダブルストロークで演奏した時と、何かが違うはずです。

一つは、身体の軸がダブルストロークによってブレなくなる、という事。
これを体感してみてください。

もちろん音楽によるところもあるのかもしれませんが、クラシックの一部ではシングルストロークを鉄則させる所もあると聞きます。しかし、そうなるとヴィブラフォンのように真ん中にペダルがあって、そこに右足を固定する姿勢で演奏する楽器では、かなり身体の軸が揺れてしまうのです。(ペダルが横長のスクールモデルをプロは使わない)

さて、ダブルストロークをターンに使う事で、そのダブルで弾く音への意識が高まります。
シングルストロークではあまり意識する事がないかもしれません。

このターンのところの音程に注目です。
ある箇所は全音ですが、ある箇所は半音の動きです。

この半音の動きのところはアプローチノート(approach Note)と言って、前の音が後ろの音を強調させる効果を生んでいます。つまり装飾音符なのですね。

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しかし、その装飾音符の中には、その箇所のコードのコードスケールを示すヒントとなる重要な音もあるので、それを見分けてみましょう。

最初のBbm7のところのターンは完全に前の音は後ろの音を強調する為だけの装飾音符です。なぜならBbm7というコードネームのコードトーンBb-Db-F-Ab にぶつかるAの音なので、この音は衝撃的に耳を引き付ける役割を持つ、完璧な非和声音となるので、装飾音符と判断されます。

しかし、続くEb7のところは・・・・・?

おさらいです。
コードネームと調号だけで判断すると、次のようなコードスケールがこの二つのコードに存在します。

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●(黒丸)の箇所がコードスケールとして予測されるテンション

さて、そうなると、Eb7のところで出て来たメロディーの音と、元々調号との整合性で予測される音にメロディーで使われている音を合わせると・・・・・・

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ううむ。。。。

このままではどれがコードスケール上の音でどれが装飾音符なのか判断できませんねぇ。。

ううむ。。。。

もう一度このスケールを眺めてみましょう。
何か気付きませんか?

唯一、この音階を説明出来るヒントが、メロディーに潜んでいるのですよ!




音の流儀 2 2018/5/25掲載

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赤松敏弘(vib)meets市原ひかり(tp)with小山太郎(ds)SPB

メロディーを弾く時のダブルストロークとターン(メロディーの)を組み合わせる事で、演奏している自分にこれらの音を意識する事で得る感覚について述べた。

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その中で出て来たターンで、Eb7と記された小節のターンの箇所を分析すると、単にアプローチノートがコードスケール上の音に解決(アプローチ)しているだけでは無さそうな箇所が見つかった。

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このEb7の部分に出て来るメロディーの音を全て書き出してコードトーン及びコードスケール音と合わせて見ると・・・

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こんな感じでコードトーンの隙間に音が多過ぎるのがわかる。
しかも、9thがあるのにb9thがあったり(通常この二つは同時に使わない)、13thがあるのにb13thが同居していたり(これも通常同時には使わない)する事から、どうやらこの部分は一つのコードスケールではなく、二つのコードスケールを有するコードがある、と仮定される。

メロディーのE→Fの部分は、F(9th)に対するアプローチノートとしてE(b9th)があると考える。

9thと13th、そう区切ると自然に b9thとb13th というペアに分かれる事がわかる。

9thとb13thは組み合わせにくいし、b9thと13thの組み合わせはコンデミが成立するが、メロディーのターンの動きはC(13th)→Cb(b13th)となるので、ここのC→Cb(=B)のターンはアプローチノートではなく、コードスケールの変わり目と解釈すれば、Eb7の前半がミクソ・リディアン・スケール、後半はハーモニック・マイナースケール・パーフェクト5th・ビロウ(HMP5)に整理される。

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この曲から僕はいろんなものを学んだ。
ハーモニー楽器であれば、コードにひとつテンションをいれるだけで簡単にコードスケールの素性を示せるのに、ハーモニーの出ない管楽器はどうするのだろう? という解答をこの曲のメロディーから得た。
もちろん、ソロも大切だが、僕はこのメロディーにこそビーバップの真骨頂があると思っている。

やがてそれらの経験と蓄積から独自に法則を編み出してハードバップが登場するのは時間の問題だったことは想像が付きます。

愛を持って、もしも今、この曲のこの箇所に何かを記すとすれば。。。。
ぼくは、こんな記述を付け加えて、偉人達をリスペクトする。

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ダブルストロークでターンを意識しなければ、気付かなかったかもしれない、大切なニアンスだ。




いい音の為なら何でもする 2018/6/22掲載

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古典的なジャズの名曲“Danna Lee”を使って解説中。

本日の“いい音”の為なら何でもする! ということに連動してみましょう。

僕はこの曲でソロうんぬんよりも、テーマを演奏する事で実に多くのことを学びました。
ジャズという事でこんなに学べた曲は他に見当たらないかもしれません。
「へんな人」と思ってください(笑)

さて、“いい音”の為なら何でもする! という事でこの曲を演奏する第二のチャプター(第一は手順でした)は音の余韻。
“いい音”を奏でるプレーヤーはどんな楽器でも「余韻」にまで配慮が行き届いた演奏をします。
何でもする、本当にその為になら「何でもする」のです!

“Donna Lee”テーマの5小節目から8小節目
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ここで新たに出て来るキーワードがあります。
マレット・ダンプニング・テクニックの中の“One's hand Mallet Dampening”。片手によるマレット・ダンプニングというテクニックです。

マレット・ダンプニングを単なるミュートと考える人もいますが、僕は感情表現の一つとしてスラーなどと同等なものと考えています。

そのため、どのように記号で説明するかを考えた結果、次の様に譜面に表してみました。

・スラーで繋がる二つの音符の箇所に適用
・最初の音を消すタイミングを「↑」で記す

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o.m.d = One's hand Mallet Dampening

・Ebm7 から D7になる所のメロディー(スラーの箇所)に適用。

以下、実際のマレット運びを(1)〜(3)の画像で解説。

*(1)〜(3)はペダルを踏んだままで行う

(1) メロディー“F”を右手のマレットで弾く
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(2) メロディー“E”を右手のマレットで弾くと同時に・・・
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(3) 先に弾いた“F”の鍵盤に右手のマレットをスライドさせて消す
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単純ながら。ある程度のテンポ以上になるとなかなか難しいかもしれませんが、頑張って!

手順を替えると、もう一カ所この「表現」が使えて歌が活き活きとしてきます。

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“いい音”のためなら、マレットも、叩く+ 消す + 滑らせる!

何でもします。





音の流儀 -「位置」 2018/6/15掲載

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愛媛のジャズバンド高橋直樹(b)The Young Catsとの共演

本日の本題は音を出す「位置」。
「位置」と言っても、僕らのマレット・キーボードは鍵盤の叩く位置によって様々な音色が出せる、非常に簡単なインストルメント。でも、ほとんどのマレット・プレーヤーは相変わらず研究不足な音を出している。
少なくとも一つの鍵盤から同じマレットで四つくらいは異なる音色が出せなくてはいけない。
何種類もの硬さのマレットを持ち歩いて音色にこだわっていると言われても、疑うばかりだ。

簡単な識別から。

コードを弾くときは素早くチェンジ出来るように鍵盤のダンパー寄りのゾーンを叩く。

基音側はココ
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派生音側はココ
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両方に跨る場合の例

Eb7 altの場合
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D7 alt の場合
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コード以外でも鍵盤の端を叩く場合は多く、
ダブルストロークで基音側と派生音側を連打する時もこの位置を使う
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メロディーなどの豊かな響きが得たいときはここを叩く
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ただし共鳴管の真上はデッドゾーンなので少し外すといい音が鳴る。

マレットのヘッドはこの位置。角度によって音色をコントロールする
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強い音が欲しい時はマレットのヘッドの真ん中(腹の部分)をヒットさせる
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ただしこれを連打すると音に表情がなくなる(耳も痛くなる)ので要注意。

ヴィブラフォンは振動音も効果として演奏に取り込む。

ハーフ・ベダリングの時にこの位置を叩くとダンパーが共振して打撃音が多めの音色が出る。
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演奏上のアクセントを付けたいときに使う。

さて、4本のマレットを使って、トップノートはメロデイー、それ以外はコード伴奏と区別する音色を同時に出す時は、このようにマレットで叩く位置を調整して音色を替える。
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右手はこのような位置でトップ(右側)のマレットはホールの近くを狙う
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左側はバー・サスペンション・コードを挟んで伴奏の時と対象に位置にする事で左手の二本のマレットと等しい音色が揃う。

ダメな例はこちら。
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これでは全ての音色が同じボリュームで鳴ってしまう。トップノートとかの区別のない伴奏であれば問題はないが。

もう一つ、ダメな例。
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いくらマレットの位置を伴奏とメロディーに分けたからと言って、この位置では演奏上に不都合が起きる。

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一応、左から3本は伴奏(コード)を弾くゾーンにあるけれど、右手のマレットを持つ手がどのようになるか想像して欲しい。

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これでは右手の手首から先を捻ってしまう。4本を持つ時に絶対に手首から先を捻ってはいけない。手を痛めるだけでなく、演奏上も素早いチェンジに対応できないからだ。

同じように見えてもこちらを推奨する。
ほんのちょっと右手の内側の位置が異なるだけだけど、、、

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これだと手首を捻らなくて済む。手を傷めないばかりか、素早いチェンジにも対応出来る。

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音色の研究は位置を探るところから始めると一つのマレットで何種類もの音色が自分のものになる。
そこまでやってから硬さの異なるマレットに頼っても遅くはないよね。